ミンギョンさんが書いた『私たちにはことばが必要だ フェミニストは黙らない』は2016年、韓国でクラウドファンディングで出版され話題になり、日本でもベストセラーになったフェミニズム本だ。この本のメッセージは、明快だ。「フェミニズムは男の人にわかってもらう思想ではない、以上!」。その力強さに、私は打たれたのだった。知っていたよ、そのこと。でも、日本でそれ言うのは、ほぼタブーだったよ。だからこの国では、「私はフェミじゃないです」と笑いながらフェミを語るフェミっぽいのが主流で、「フェミニズムは男の人も幸せになる思想なの」「フェミニズムはヒューマニズムなんです」と仏のように全知全能で、女神のように与え、許すのがフェミ、と思っている人がいるのだよ。でも、フェミってそんなんじゃない。痛みだよ、怒りだよ、女性差別社会を生きてきた女たちの叫びだよ!
そんなことを、私はミンギョンさんに訴えるように話しかけ、15年前の「オジサンにわかってもらえなくていい」と泣いた自分のことを思い出したのだった。韓国の30代フェミに、語るべきフェミとは何かを明確にしてもらったのだ。
ところで。15年前の先輩とは先日、某所で偶然会ったのだ。あのときはありがとうございました!と伝えた。嫌みではなく、心からそう思った。先輩も30代だった。迷うことも多かったはずだ。オジサンにわかりやすい文章を若い女2人が四苦八苦して書いたことも含めて、日本のフェミニズムの道を一緒に歩いたような、そんな古い仲間に出会えたような気がしたのだ。
※週刊朝日 2019年3月8日号