作家・北原みのり氏の週刊朝日連載「ニッポンスッポンポンNEO」。今回は「フェミニズム思想の理解」について。
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30代になって間もない頃、朝日新聞社から長文の執筆依頼がきたことがある。
酒井順子さんの『負け犬の遠吠え』についての論考で、喜んで引き受けたものの、物書きとしてあれほど担当者とやりあい、闘い、苦労した原稿はなかった。
担当は、たまたま同じ大学の先輩だった。彼女は私の原稿を褒めつつ、「このままでは掲載できない」と自宅に来てくれ、私がキーボードを打つ隣で、文字通り張り付くようにして、一行一行添削してくれたのだ。
先輩が私に教えたのは、ご自身が会社で教わってきたことだった。新聞記事の文体。←例えばこんなふうに体言止めしちゃいけない等の文章のお作法。もちろん、それは素直に直すけど、あの日、私は途中で涙ぐみ「できない」と言ったのを覚えている。それは先輩が繰り返し言う「オジサンにわかるように書いて」という注文の意味が本当にわからなかったからだ。
わかってもらえなくていいです。だってこれ女の話だから。オジサンがわからないような話を女はしてるんです。と私は抵抗した。それでも先輩は私の千倍強い人だった。彼女は根気強く原稿に赤を入れ、おかげでデスクのチェックもすぐ通り、しかも原稿の出来はよく、「北原さん、文章が巧くなってる」と知人に言われ微妙な気持ちになったことも覚えている。
はぁ……。そんな15年前のことを思い出したのは、先日、韓国のフェミニスト作家イ・ミンギョンさんと話す機会があったからだ。