医師が診療の際に患者からよく聞かれることの一つに「病気を治すために食事はどうしたらいいですか?」という質問があります。京都大学医学部特定准教授で皮膚科医の大塚篤司医師が、ニキビと食事の関係について語ります。
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私が勤務する病院の近くには、ニシンそばのおいしいおそば屋さんがあります。外来診療や研究の合間、私も気分転換をかねておそばを食べに行くことがあります。
おそばはグリセミック指数(Glycemic Index:GI)が低い炭水化物です。GI値とは、炭水化物が消化され糖に変わるときのスピードを表す数値。もともとは糖尿病などの食事指導に使われていました。GI値が低いほうが太りにくい。そのため、糖質制限ダイエットの流行とともに、GI値が低いものを選んで食べるGI食が一般の方にも広まりつつあります。
お気に入りのおそば屋さんは病院に近いため、多くの病院関係者や患者さんが利用します。テーブル間の距離も近く、周りの会話は自然と耳に入ってきます。
「食事に関しては何も言ってくれない」
「お医者さんはそういうところ弱いね」
病院で診察を終えた後と思われるご年配夫婦の会話です。
テレビやインターネットでは頻繁に「〇〇(病気の名前)に効く食事」といった内容の番組が取り上げられます。その影響からか、外来では食事に関しての質問を受けることが度々あります。
「病気を治すために食事はどうしたらいいですか?」
その質問に多くの医師は、
「バランスよく食べてください」
と答えます。
食べ物と病気の関係は、食物アレルギーなど原因がわかっている疾患以外、残念ながら不明なことが多いです。正確に言うと、研究されているけれども決着がついていないものがほとんどです。
先日も外来で20代の女性から質問を受けました。
「ニキビや吹き出物ができない食事を教えてください」
さて、困った。
吹き出物とニキビは基本的には同じ病気であり、毛穴の炎症です。ニキビは専門的には「尋常性ざ瘡(じんじょうせいざそう)」といいます。ニキビの多くは、ニキビ菌(アクネ桿菌<かんきん>)と呼ばれる正常の皮膚に存在する菌による炎症です。顔や胸、背中に多発します。一方、吹き出物は毛包炎(もうほうえん)といい、通常は1個や2個しかできません。黄色ブドウ球菌(おうしょくぶどうきゅうきん)という細菌が原因になることが多い皮膚感染症です。