前川喜平さん。本連載では読者からの前川さんへの質問や相談を受け付けています。テーマは自由で年齢、性別などは問いません。気軽にご相談ください。
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80年代の霞が関 (※写真はイメージです) (c)朝日新聞社
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 文部科学省で事務次官を務めた前川喜平氏が、読者からの質問に答える連載「“針路”相談室」。今回は、キャリア官僚である父の尊大な態度が嫌いだという男性からの相談です。

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Q:私の父は東大法学部卒のキャリア官僚です。自分を“高級官僚”だと思っているのか、人をさげすんでいるようなところがあって昔から嫌でした。例えば、就職活動の最終面接の前には「そこの社長は社会的にみれば俺より下。緊張なんかしなくていい」と私に言い、ノンキャリや地方公務員も見下している感じがしました。官僚になってちやほやされ、忖度されて、勘違い野郎になってしまったんだと考えています。でも、同じ官僚だった前川さんからは嫌な感じを受けません。次官にまでなった人は何か違うのでしょうか。(東京都・29歳・男性・会社員)

A:親をきちんと批判できることは、自立している証拠。父親を「勘違い野郎」と言えるあなたは、すでに父親を超える大きな人間になっていますね。

 私の上司にはあなたのお父さんみたいなタイプが多かった。スナックにしょっちゅう連れていかれて、なぜかスナックのママの手伝いをさせられました。職場の上下関係が、当たり前のように飲み屋にまで持ち込まれるんです。嫌だなあ、こういう上司にはならないぞと思っていました。

 私は、心の自由を大切にしてきました。誰しも組織を離れると一人の人間なんですから、組織の中での地位や権限にすがっている方がおかしい。組織の中で上下関係があっても、外では自由で平等な人間同士です。

 国会議員や国家公務員など「国」の字がつく仕事の人には、権力志向の人が多い。公務員は「公僕」とも呼ばれ、憲法15条では「全体の奉仕者」とされています。世の中のために仕事をしようとするなら、苦しんでいる人や弱い人の立場でものを考えられることが大事。お坊ちゃん育ちで自分と異なる境遇の人に会わないまま大人になった政治家や、受験競争に勝ち抜くことでエリートの座を得た官僚の中には、他者への共感の範囲が狭くなり、弱者や少数者の気持ちに寄り添うことができない人が多い。

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