

落語家・春風亭一之輔氏が週刊朝日で連載中のコラム「ああ、それ私よく知ってます。」。今週のお題は「アライアンス」。
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なぜ「牛の糞」なのか? 『さるかに合戦』の永遠の謎。母ガニを猿に殺された子ガニのもとに集まった臼、蜂、栗、そして牛の糞。この斬新過ぎる『アライアンス』はどういうことだ。
“牛の”とあるが、本当は最初牛自体も仇討ちのメンバー候補だったのではないか。仇討ちの目的は『猿を殺す』。子ガニに同情した仲間が猿の殺害を計画したとあるが、果たしてそうか? 母ガニは生前、蒔いた柿の種に向かって「早く芽を出せ、柿の種。出ないとお前をチョン切るぞ!」と脅すほどの荒い気性。その血をひいた子ガニは、自ら猿殺害を謀りメンバー選定したのではないかと、私はふんでいる。仕留めるのは臼。ただ臼が落ちてくるだけって確実性に欠ける。私だったら心臓を一突きにする。やはりその時代・状況を踏まえると頼れるのは牛だ。猿を自宅に閉じ込めて牛の角で血祭りである。ここからは(ここまでも)私の妄想。
猿殺害計画実行当日の朝。子ガニに「牛と3人で7時半集合」と言われた栗と蜂の会話。ちなみに舞台は東北地方。
栗「行くべ、蜂。うすもよんでこよぅ」
蜂「誰を?」
栗「うす!」
蜂「あー、うすかね。子ガニどんはうすにも声かけたか? あいつはえらく強えから間違いねえべ」
2人「うすよう。カニのおっかさんの仇討ちに行くべー」
臼「なんだそら? おらそっだらこと聞いてねえぞ。おっかさんに何かあったかや?」
2人「知らねえのけ? かくかくしかじか」
臼「なぬ!? とんでもねえ猿だっ! おらが仇を!!」
3人「じゃあ、行くべ! えいえいおーっ!」。子ガニのもとに向かう栗、蜂、臼。