アトピー性皮膚炎の治療などで使われるステロイド。筋肉増強剤にもステロイドがありますが、これは病院で処方されるものとは別物です。京都大学医学部特定准教授で皮膚科医の大塚篤司医師が、ステロイドの違いについて解説します。
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2018年大みそか、平成最後の紅白歌合戦は記憶に残る番組でした。ラストのサザンオールスターズのステージ、そしてユーミンとのコラボは圧巻の一言。それでも個人的に印象に残っているのが、天童よしみさんの歌の真っただ中「筋肉体操」をはじめる3人。腕立て伏せをしたかと思えば突然サックスを吹き始める武田真治さん。あまりのカオスに度肝を抜かれました。
さて、ここ数年、筋トレブームが続いています。「2018ユーキャン新語・流行語大賞」にノミネートされた「筋肉は裏切らない」という言葉は、NHK番組「みんなで筋肉体操」で近畿大学の谷本道哉准教授が使う決めぜりふとして有名になりました。30代以降、筋肉は年間約1%ずつ減少していきます。そのため、筋トレは健康管理をするうえで有用です。
ところで皆さんは、筋肉増強剤の「ステロイド」と病院で処方される「ステロイド」、全く違うものということをご存じでしょうか?
ステロイドはホルモンの一種です。そしてステロイドホルモンにはいくつかの種類があります。女性ホルモン、男性ホルモンなどの性ホルモン。副腎という臓器でつくられる副腎皮質ホルモン。
筋肉増強剤で使われるステロイドは性ホルモンのひとつです。男性ホルモンであるテストステロンに倣った合成薬物のこと。つまり、テストステロンの類似体がドーピングに用いられるステロイド、通称「アナボリックステロイドホルモン」と呼ばれるものです。
一方、病院で使われるステロイドは副腎皮質ホルモンのことです。副腎皮質ホルモンとは、副腎という腎臓の上に存在する小さな臓器で産生されるホルモン。この副腎皮質ホルモンですが、さらに種類が分かれます。糖質コルチコイド、電解質コルチコイド、副腎アンドロゲンの3種類です。このうちお薬として使われるのが、糖質コルチコイドと呼ばれるものの合成体です。糖質コルチコイドには炎症を抑える作用(抗炎症作用)があります。