国立がん研究センター東病院 乳腺・腫瘍内科医長・向井博文医師
国立がん研究センター東病院 乳腺・腫瘍内科医長・向井博文医師
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乳がん データ (週刊朝日 2019年1月25日号より)
乳がん データ (週刊朝日 2019年1月25日号より)
乳がんのサブタイプと薬物療法 (週刊朝日 2019年1月25日号より)
乳がんのサブタイプと薬物療法 (週刊朝日 2019年1月25日号より)

 乳がんは肺がんとともに、近年、薬物療法が発展してきた。治療の選択肢も多く、進行再発がんにおいても生命予後の延長が期待できる。さらに今後は、ゲノム医療の進展により、さらに細分化された個別化治療が可能になりそうだ。

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 がんの薬物療法は、抗がん剤、ホルモン剤、分子標的薬、免疫チェックポイント阻害剤など、そのがんの性質に応じて薬を使い分けるようになってきた。

 現在、乳がんは単一の病気ではないという考え方に基づいて、薬物療法においては進行度だけではなく、事前に調べたがんの組織型、悪性度、薬物療法への反応性などにより五つのサブタイプに分けて治療がなされている。

 五つのサブタイプは(1)ルミナールA型(ホルモン受容体陽性で増殖速度が遅いタイプ)、(2)ルミナールB型(ホルモン受容体陽性で増殖速度が速いタイプ)、(3)ルミナールHER2型(ホルモン受容体とHER2たんぱく陽性)、(4)HER2型(HER2たんぱく陽性、ホルモン受容体陰性)、(5)トリプルネガティブ型(ホルモン受容体とHER2たんぱく陰性)に分類され、そのタイプに応じた薬が使い分けられている。

「以前、HER2型やトリプルネガティブ型と言われるタイプは、治療後の経過がとても悪かったのですが、HER2型に対してはハーセプチン(一般名:トラスツズマブ)ほかの分子標的薬が出現したことで大きく改善してきました」

 そう話すのは、国立がん研究センター東病院乳腺・腫瘍内科医長の向井博文医師だ。そして今、一番のトピックスは、乳がん患者の約15%に該当するトリプルネガティブ型に対する治療だという。

「トリプルネガティブ型は以前、抗がん剤しか使えないタイプでしたが、そのなかのBRCA1、2という遺伝子に変異があるタイプに対してPARP阻害剤という薬・リムパーザ(一般名:オラパリブ)が登場。進行再発転移乳がんに対して保険適用となりました」(向井医師)

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