──描くことが楽しめなくなった?

 そうなの。結局その取引はやめました。そんな時、夫が50号の大きなキャンバスを持ってきて「ここに好きな絵を描いてみたら」って言ったんです。夫曰く、そのキャンバスを目の前にした時、私の目がキラキラしたんですって(笑)。キャンバスにおデブの女性の絵を好きなように伸び伸びと描きました。その絵を夫が近代美術協会の公募展に出品したら、なんと入賞したんです。本格的に絵を習ったことはないし、65歳で初めて出品しての入賞でしょ、嬉しかったですね! そこから新日本美術協会展、モダンアート展と初出品で入賞することができました。

──年齢や経験に関係なく才能を認めてもらえるのは嬉しいですよね。

 本当はそうあるべきですよね。でも年齢で切られたこともありますよ。怖いもの知らずで著名な画廊に営業に行ったら、うちは若い人を応援しているので40歳までの人しか扱っていないと言われたこともあります。その画廊の方針だから仕方ないけど、本来年齢は関係ないと思いました。才能や愛は幾つになっても枯れることなく溢れ出すことがあるからね! でもそんな時は「勝てなかったけど負けてはいない」という言葉で自分を励ましました。

──これからはどんな活動を?

 やはり好きな絵を描き続けたい。朝目覚めたらやりたいことがある、これはとても幸せなことですよね。昨年の5月に腎臓がんが見つかって、やりたいことをやるぞという思いが強くなりました。医師にがん告知された時、自分の人生を振り返り、なおさらそう思いました。お陰様で私のがんは早期発見だったので、手術も無事済んで今は元気にしています。

 大切なのは自分の人生を生きること。それは今からでも遅くない。人生は楽しまなくっちゃダメ。好きなことをやり、行きたいところに行き、会いたい人に会う。ちょっとした勇気も必要だけど、そうしていきたい。

(構成/ライター・谷わこ)

週刊朝日  2019年1月25日号

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