『ダウンビート:ザ・グレイト・ジャズ・インタヴューズ』フランク・アルカイヤー、エド・エンライト編纂
『ダウンビート:ザ・グレイト・ジャズ・インタヴューズ』フランク・アルカイヤー、エド・エンライト編纂
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●本書について

 本書は文字通り、世界的なジャズ専門誌ダウンビートが、創刊75周年を記念して、その輝かしい歴史を刻む優れたインタヴュー記事と写真を厳選、一巻にまとめたアンソロジーである。

 このインタヴュー集には、ダウンビート主催による“ジャズ・ホール・オブ・フェイム”を受賞した数多くの偉大なジャズ・アーティストが登場する。ジェリー・ロール・モートン、ルイ・アームストロング、カウント・ベイシー、デューク・エリントン、ベニー・グッドマンといったジャズの創成期における伝説的人物から、チャーリー・パーカー、ディジー・ガレスピー、ジョン・コルトレーン、ソニー・ロリンズ、マイルス・デイヴィスといったビバップのヒーローにいたるまで、あるいはオーネット・コールマン、セシル・テイラー、セロニアス・モンク、ラサーン・ローランド・カークといった独自のスタイルを追求する個性派から、チック・コリア、ハービー・ハンコック、パット・メセニー、ジョー・ザヴィヌルといったエレクトリック・シーンのパイオニアにいたるまで、ジャズ史に名を残すミュージシャンのさまざまな肉声が綴られている。

 また彼らの声を伝えるインタヴュアーにも、ナット・ヘントフ、ラルフ・J・グリースン、レナード・フェザー、ドン・デ・マイケル、ハワード・マンデル、ジョン・マクダノーといった造詣の深いジャズ評論家が顔を揃え、興味深い会話が展開される。

 ダウンビートは過去20年間、“ジャズ、ブルース&ビヨンド”を旗印に掲げてきた。したがって、多くのサプライズをもたらす専門誌ではあるが、まずは、本書『ダウンビート:ザ・グレイト・ジャズ・インタヴューズ』が、ジャズの伝説を生むことになる。ジャズ・ジャイアンツが自らの言葉で、アメリカの音楽とアメリカそのものに関して語る貴重なアンソロジーである。

●本文より抜粋

1938年8月/9月

「ジャズは、1902年に私が作ったのだ。決して、W.C.ハンディではない」

拝啓リプリ殿

私は長年、貴殿の風刺画『ビリーヴ・イット・オア・ナット』に親しみ、貴殿のラジオ番組にも熱心に耳を傾けてきました。貴殿の活動は実際、自然科学に多大な貢献をしていると思います。ところで貴殿は、1938年3月26日の放送において、W.C.ハンディをジャズ、ストンプ、ブルースの生みの親と紹介しました。この発言は、私を不当に扱うものであり、また貴殿の支持者の多くに誤解を与えるものでもあります。

ジェリー・ロール・モートンより

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