北原みのり(きたはら・みのり)/1970年生まれ。作家、女性のためのセックスグッズショップ「ラブピースクラブ」代表
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イラスト/田房永子
イラスト/田房永子

 作家・北原みのり氏の週刊朝日連載「ニッポンスッポンポンNEO」。今回はカルロス・ゴーン容疑者について。

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 拝啓 ゴーン様

 初めまして。私は東京に住む一市民です。ひと月以上の拘束となりましたが、いかがお過ごしですか? 私、日産にもルノーにも縁はありませんが、ゴーン様に語りかけたい気分です。

 私は4年前の12月にわいせつ物陳列の疑いで逮捕され、留置場に2泊した経験を持っています。東京地検特捜部に逮捕され拘置所に拘束されているあなたとは、状況が全く違うことは存じております。あなた同様、東京地検特捜部の取り調べを受けた“お縄系セレブ”仲間の佐藤優氏によれば、そちらは留置場よりも、ましな食事だそうですね。裁判所の地下牢で、縄でつながれ手錠をかけられながら乾いたコッペパンを食すような状況にないことは承知していますが、それでも心中お察しします。

 本来ならば、クリスマスの準備をされている頃ですよね。それなのに、夜中、誰かのうめき声で目が覚めたり。点呼のために正座を強いられたり。タオルや石鹸の置き方に指導が入ったり。蛍光灯が一晩中つく部屋で、布団を頭まで被れば、「被るな!」と注意されたり。あげくの果てに弁護士も入らないで取り調べを一日中受け続ける。その理不尽さ、その人権感覚ゼロ度に、驚かれたのではないでしょうか。

 あなたが経営していた会社のお膝元、日本って、そんな国なのです。

 ゴーン様がどれだけの「悪事」を働いたのかは、存じません。しかし、この国であなたは既に「犯罪者」扱いです。社会的名誉は剥奪され、人権は蹂躙(じゅうりん)された。逃亡・証拠隠滅の恐れがある場合、逮捕・拘束は正当化されますが、あなたほどの有名人、どこに逃げるというのでしょう。日産に会社ごと見限られたあなたに、社内資料を隠滅する力など、もうありはしないでしょうし。

 そこでゴーン様、お願いです。これから、ぜひ大騒ぎしてほしい。日本の刑事司法の残酷さを、民主主義のお膝元、おフランスで訴えてほしい。なにしろあなたは、日本社会の人権感覚ゼロを身をもって体験した、貴重なヨーロッパ系男性なのですから。

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