「まあまあ、おまえたち」
と三毛婆さんがいう。
「モフモフだって、ほんとに幸せかどうかわからないよ。人間の庇護下で、今ぬくぬくしてるだけ。人間の心変わりに怯えているかもしれない」
「それはないわ」とあたしはいった。「それはない」とサブローもいった。
あいつらなにも考えず、ただぬくぬくしてるだけ。おなじ猫なのに、あたしたちのために頑張ってくれたところを見たことがない。あいつら、あたしたちを、おなじ猫だなんて思っていない。
「でもさ、でも。世の中がひっくり返って、いちばん多数の我々が、いちばん幸せになるなんてこと、起きないかな」
あ、雪が降ってきた。
<クイズ、人間は何の喩えでしょう。答えは複数>
※週刊朝日 2018年12月28日号
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