作家・北原みのり氏の週刊朝日連載「ニッポンスッポンポンNEO」。今回は「バブル女」とバブル経済について。
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「バブル世代、どうにかしてほしい!」
最近、アラフォー(70年代後半~80年代前半生まれ)の女性たちから、こんな訴えを聞いた。「あ。」という感じで、私と隣にいる友人(←バブル世代)を見たので、ケーキを食べながら「私、バブル世代じゃないから~」と私は言い、「私、貧乏だったから~」と友だちは言い、話を聞く。なんでもバブル世代の上司が増え、迷惑度がこれまでになく深まっているという。
「あの人たち、努力すればできないことはないって、言うんだよ!?」「スマホもPCも新しいのに、新しいアプリは覚えようとしないし!」「苦労してない癖に苦労話を語りたがるし!」。批判は容赦なく、しまいには「バブル世代の取扱書」等、読みたい本のタイトル案まで出始めてしまった。
バブル絶頂の80年代後半、私は高校生だった。86年に男女雇用機会均等法が施行され、当時の私にとって「働く」とはウォール街みたいな所でヒール履いて巨大なお金を動かす、というイメージだった。“そういう場所”から長年排除されてきた女にも、“そういう将来”があるのだよ、と時代に言われた気になっていた。
あの頃、1年に一度心待ちにしていたドラマがある。「家政婦は見た!」だが、88年の舞台はニューヨークだった。私はあの回をなぜか強烈に覚えている。ハドソン川のほとりを歩く市原悦子が「こんな時代になったんだね、会長さん」というようなことを語るのだ。懸命に働き、世界一お金のある国になり、急に視界が開け、どこにでも行ける切符を手に入れたような感覚。あの言葉は時代の言葉だった。そしてそれは、特に女に響いたのだと、私は思う。