「カルロス・ゴーン容疑者」が経営トップになり、V字回復を遂げた2000年代前半、日産の現場は活気に満ちていた。だが今は、不満が一気に噴出している。
ゴーン体制が疑問視されるようになったのは、日産に加えルノーのトップに就いた05年からだ。
日本の市場を軽視し、車種も整理し、モデルチェンジも遅れがちに。ルノーに配慮し、インドにあった小型車の生産拠点をわざわざ賃金の高い仏国内に移した。人事でもお気に入りが重用され、会社を去った人も多い。大株主のルノーも手中に収めたことで、誰も逆らえなくなっていた。
「ゴーンさん憎しの内部告発があったのだろう。人事への不満もあって、反ゴーン派の人は実は社内にたくさんいたのです」(自動車評論家の国沢光宏氏)
日本の自動車産業を守りたい経済産業省も、今回の追放劇をチャンスととらえる。ルノーに日産が乗っ取られると、三菱自動車まで失いかねなかった。日産は経産省の意向もバックに、主導権を取り戻したい考えだ。ルノー株を買い増して支配力を制限することもあり得るが、仏政府と日本との外交問題に発展する恐れもある。
今後も捜査は続くが、久しぶりの大事件に特捜部の意気は上がる。外国人労働者の受け入れ拡大に向けた出入国管理法改正案の審議で、矢面に立たされる山下貴司法相は元特捜検事で1992年の任官。森本宏・東京地検特捜部長と同期で、森友・加計問題で低下した検察の威信回復を望んでいる。
ただ、ゴーン逮捕を喜ぶ人がいても、いつまで笑っていられるのか。