そして、買う側である利用者にも、自ら積極的に理解を深める姿勢が求められる。購入後に「こんなはずではなかった」と後悔しないためにも、まずは耳鼻咽喉科を受診して聞こえの状態を正しく診断してもらうこと。そして、正しい購入・装用の流れを知っておくことが必要だ。

 難聴は、聞こえの程度により「軽度」「中等度」「高度」「重度」に分けられ、一般的には中等度難聴と診断されたら補聴器の装用を勧められる。「よく聞こえない」と思ったら、まずは耳鼻咽喉科を受診して補聴器相談医による診察と聴力検査を受け、病気などが隠れていないか、補聴器の効果が得られる難聴かなどを診断してもらう必要がある。

 その上で、補聴器の装用を勧められた場合、受診した病院に補聴器外来があるときは、そこで試聴から購入までできることもある。できない場合は、補聴器販売店に行って購入する。

 補聴器販売店で購入する場合は、補聴器相談医が作成した「補聴器適合に関する診療情報提供書」を持参して、認定補聴器専門店に行くことが勧められる。診療情報提供書とは、補聴器を購入する際に必要な診療情報が記載された書類で、18年度からこの書類により医療費控除が受けられるようになった。地域により、認定補聴器専門店が近くにない場合は、補聴器相談医が紹介する販売店に行くのが安心だ。

 補聴器販売店では、認定補聴器技能者と一緒に補聴器を選び、聴力に合わせて調整した補聴器を貸し出してもらって一定期間試聴する。その上で、補聴器の効果を確認できたら購入するのが基本の流れとなる。

 加齢性難聴は、少しずつ聞こえなくなっていくことが多いため、自分ではなかなか気づきにくい特徴がある。また、気づいても「まだ大丈夫」とそのままにしている人もいるだろう。

「加齢性難聴はそのままにしておいてよくなることはなく、むしろ進行していくものです。聞こえないまま放っておくと、会話が成り立たないなど日常生活に支障をきたすだけでなく、認知症のリスクが高まるという報告もあります。早めに補聴器の装用を検討することが望ましいでしょう」(原医師)

 あてはまる項目が多くなったら、一度、耳鼻咽喉科の専門医を受診することをおすすめしたい。

 また、好評発売中の週刊朝日ムック「『よく聞こえない』ときの耳の本」では、耳鼻咽喉科での検査や治療についての詳しい解説や、検査ができる病院リストを掲載している。こちらも参考にしてほしい。(ライター・出村真理子)

週刊朝日  2018年11月30日号