ジャーナリストの田原総一朗氏は北方領土問題の行方を推測する。
* * *
安倍晋三首相は11月14日にシンガポールで、ロシアのプーチン大統領と会談した。会談は想定より30分ほど長い約1時間半に及んだ。うち約40分は両首脳だけの会談で、この間に平和条約と、さらには北方領土問題についても話し合われたようだ。
安倍首相は会談後の記者会見で、次のように語っている。
“戦後70年以上残されてきた課題を次の世代に先送りすることなく、私とプーチン大統領の手で必ずや終止符を打つという強い意志を大統領と完全に共有した”
そして、ペスコフ大統領報道官は記者団に“プーチン大統領と安倍首相は、1956年の日ソ共同宣言を基礎に、平和条約問題の交渉を活性化することで合意した”と話した。
日ソ共同宣言とは、鳩山一郎・フルシチョフ両首脳の間で行われたもので、平和条約の締結後に、歯舞・色丹の2島を日本に引き渡す、というものであった。その後、この交渉が進まなかったのは、深刻な冷戦中で、米国の対日政策の責任者だったダレスが、日ソが友好を進めることに強く反対したためである。
しかし、その後、小渕恵三首相、森喜朗首相などが、ロシア首脳と会談し、2島返還の交渉は進んでいたのだが、小泉純一郎内閣の田中真紀子外相が突如、4島返還と言いだして、プーチン発言によれば、ぶちこわしたのである。
そして、2018年9月のウラジオストクでの会合で、プーチンが“何の事前条件も付けずに年末までに平和条約を締結しよう”と言ったことで、日本のマスメディアは“プーチンがちゃぶ台をひっくり返した”と大々的に報じた。プーチンが2島返還を否定したというわけだ。