その直後、私は小渕・森両首相をロシア首脳に引き合わせた人物、つまりロシアと特別なパイプを持っている人物2人に会い、マスメディアの報道について質した。すると2人は“ちゃぶ台をひっくり返した、というのは大変な誤報だ”と強調した。現在、ロシアは大変な不況で、プーチンの支持率も大きく落ちている。ロシアにとっては、日本の経済協力が絶対に必要で、プーチンは2島返還には前向きだ、というのである。
ただし、日米安保条約によって、歯舞・色丹の2島が返還されると、2島に米軍基地が置かれる可能性がある。これでは返還するはずがない、というのである。
私は、安倍首相に会ったときに、そのことを問うてみた。
安倍首相は、日米交渉は簡単ではないと思うが、全力を尽くしてやるつもりだ、と答えた。
実は、プーチンが安倍首相の地元である山口県の長門市で、安倍首相と会談後のテレビの取材に対して、“米軍基地の問題がはっきりしないと返還は難しい”という意味の発言をしているのである。
当然、安倍首相はそんな事情は十分承知しているはずである。そして、おそらくは、私が安倍首相に会った以前に、トランプ大統領と何らかの交渉を行い、ある手応えを感じ取っているのではないかと思う。そして、そのことを14日のプーチンとの会談で話したのではないか。だからこそ会談時間が延び、シンガポールのリー・シェンロン首相主催の夕食会をすっぽかしてしまったのであろう。
大胆に予想すれば、来年1月に行われる日ロ首脳会談で、北方2島についての具体策がまとまるのではないか、と私は見ている。
※週刊朝日 2018年11月30日号