ウェブを使った新しいジャーナリズムの実践者として知られるジャーナリストでメディア・アクティビストの津田大介氏。米・中間選挙におけるソーシャルメディア各社の対策を解説する。
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11月6日に投開票が行われた米中間選挙。大統領選挙の2年後に実施される中間選挙は大統領への信任投票という意味合いが強く、トランプ政権の是非を問うものとして注目が集まっていた。結果は民主党が下院で8年ぶりに過半数を奪還した一方で、上院では共和党が過半数を維持し、上下院のねじれを生み出すこととなった。
中間選挙を巡っては、2016年の大統領選挙の際に見られた外国からの干渉や、混乱を狙ったデマ、フェイクニュースの蔓延(まんえん)をソーシャルメディア各社が防げるかという点でも注目が集まっていた。
この2年間、米国社会の混乱や分断を招いたとして痛烈な批判を受けてきたフェイスブックやツイッターは、汚名を返上すべくさまざまな対策を講じて準備を進めてきた。
フェイスブックは今年3月に中間選挙に向けた再発防止策を発表し、画像や動画のファクトチェック(真偽検証)、機械学習を用いた偽アカウントの検出、政治広告の広告主や資金源の透明性向上に取り組むことを明らかにした。さらに10月には「ウォールーム(選挙対策作戦本部)」を立ち上げ、選挙期間中に常時20~30人態勢で選挙に関連したフェイクニュースや情報工作などの不審な活動を、リアルタイムで監視していた。こうした活動により、中間選挙前に政治的分断を狙った投稿やその拡散を行う不審なアカウントやページを多数削除することに成功している。そのなかには、ロシアやイランの関与が疑われるアカウントも含まれていたという。
また、ツイッターも9月から10月にかけて、選挙妨害を狙った1万以上のアカウントを削除。その多くは、民主党を装って「女性の選択権のために男性は投票を控えよう」と呼びかけるボット(自動投稿プログラム)だったという。米シンクタンクのアトランティック・カウンシルによると、このデマに言及したツイッターユーザーは5千人程度で、大規模に拡散することはなかったようだ。幸いなことに、現時点では中間選挙を巡る大きな混乱は確認されておらず、ソーシャルメディア各社の対策が一定の成果を上げたと言えるだろう。