安倍首相はくり返し「沖縄県民の心に寄り添う」と述べてきたが、口先ばかりだ。
今回、県が埋め立て承認を撤回したのは、埋め立て予定海域内で軟弱地盤が見つかったことや、サンゴの保全対策に問題があることなどを根拠としている。
公有水面埋立法の第4条は、埋め立てを承認する際の要件を規定している。4条1項は<国土利用上適正かつ合理的であること>であり、2項では<その埋め立てが環境保全及び災害防止につき十分配慮されたものであること>とあるから、2項に該当することになる。
一方、県民投票はおそらく国と県が法廷闘争を繰り広げているさなかに行われることになる。そのタイミングこそが、最大のヤマ場になるというのだ。
「住民投票の結果が反対多数となった場合、撤回の理由に追加するのです。地元の住民が強く反対している辺野古基地建設による埋め立てが『国土利用上適正かつ合理的』であるはずがありません。4条1項に抵触します。2項の環境・災害上の問題は翁長(雄志前知事)さんの取り消し訴訟の時も指摘しましたが、裁判所は関心を持とうとしませんでした。しかし、県民投票による明確な民意に基づく撤回を裁判所が違法だと判断するならば、民主主義と地方自治をハッキリと否定することになります。さすがに裁判所もそれはできないだろうと期待しています」(武田教授)
2016年9月16日、福岡高裁那覇支部は、翁長知事(当時)の辺野古埋め立て承認の取り消しを違法と判断し、国側勝訴の判決を言い渡した。当日、武田教授は知事室で翁長氏と面談し、住民投票の必要性を説明したという。
「知事提案や議員提案ではなく、県民が署名を集める直接請求による県民投票を行うこと。そのうえで、埋め立て承認を撤回することが一番効果的だと思うと伝えました。翁長さんはよく理解してくださり、『小さな沖縄だけど、しっかりかじ取りしていかないと日本全体がおかしくなってしまう』とおっしゃっていました」
翁長氏の遺志が住民投票でも反映されれば、辺野古の基地建設が白紙に返る可能性を秘めている。(本誌・亀井洋志)
※週刊朝日オンライン限定記事