元山さんが続ける。
「選挙結果を尊重してもらえないのなら、別の手段もあるということです。各選挙の時、報道などで基地問題の関心が最も高いという世論調査の結果も出ていますが、投票理由は経済振興策や福祉、子育て支援などさまざまです。けれども、県民投票であれば、辺野古の問題に絞った形で明確な民意を示すことができます」
政府は「県民投票の結果に法的拘束力はない」と高をくくっているのだろうが、住民投票の結果は、例えば徳島県の吉野川可動堰の建設が中止に追い込まれたように国策をも覆す。辺野古新基地建設を巡っては、国と県が再び法廷闘争に入るが、県民投票の結果によっては活路が開ける可能性があるという。
今回、県民投票条例の制度設計に携わった成蹊大学法科大学院の武田真一郎教授が解説する。
「国交相の執行停止決定に対して、県は『執行停止の取り消し』訴訟を起こすことになります。同時にややこしい言い回しですが、『執行停止の執行停止の申し立て』をします。裁判所がこれを認めれば、とりあえず工事はストップします。本来、国が使えないはずの行政不服審査法(行審法)の審査請求や執行停止の申し立てを行うという違法行為をしているわけですから、裁判所は厳然とした姿勢を示してほしいと思います」
行審法は、行政が下した処分に対し、国民が不服を申し立てる制度だ。「国民の権利利益の救済」が法の目的だ。それを政府機関である防衛省沖縄防衛局が、基地建設を目的とした埋め立て承認が撤回されたことを不服として、国交相に救済を申し立てたのである。防衛省は一般市民と同じように申し立てができると言い張るが、ならば一般市民が米軍基地を建設できるとでもいうのか。武田教授が厳しく批判する。
「身内が判断するわけですから、国としてはこの方法が一番手っ取り早いわけです。工事を再開して既成事実を積み上げていくため、最も安易な手段を選んだのです。その意味するところは結局、沖縄県民と対話する気持ちなんてみじんもないということなのです」