その日の打ち上げで、今年の芋煮フェスでは『8時間に提供されたスープ料理の数世界一』のギネス世界記録に認定された(どんなギネス記録だ?)、並んだのに品切れで500人も食べられない人が出た(前払い金の300円は返還された)……などの話題でワーワーと。今年は、まさに『快挙』なかんじの芋煮フェスだったようです。

 翌日の昼からも場所を変えての独演会。「11時半に来てくださいー」と言われた時間に行ってみると、楽屋にも舞台にも誰もいない。開演は15時なのに何でこんな早い集合なんだ。ぶつくさ言ってると、会場の炊事場で世話人さんたちがガヤガヤ。

「うちはこんにゃく入れるよ!」「味噌はちがう!」「出汁はもっと甘くないと!」だのだの。「めっかっちゃった! すぐできますから、まぁまぁこちらへー!」。会場の芝生の庭にゴザが敷いてあって、お手伝いの人たちが車座になっていました。「これから『本当の芋煮』会ですよー、一之輔さん!」。大鍋を抱えてきた世話人さんの奥さま方。青天井の下、そよ風に吹かれながらサプライズ芋煮会が始まりました。「おいおい、これから俺、独演会なのに!」「まぁまぁ! 去年からのお約束ですから!」とノンアルで乾杯。

 美味かったなぁ。大勢で食べる芋煮。この胸がスッとする素晴らしさよ。こんな呑気な『快挙』でもいいんじゃないかしら。

週刊朝日  2018年11月2日号

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