差別とは悪意をもった排除ではなく、むしろ「優先されるべき者と僕たちが考える者」への善処として正々堂々と行われる。女性は体力がないから、多浪は国家試験に受かりにくいから。そのような根拠のないことを盾に、下駄を履かせる人間を選別する。「差別ではない、不正ではない」と薄笑いを浮かべながら。

 ちなみに、昭和大の男女合格率の差はかなり大きい。その説明を求められても、「女性の補欠者に電話をしても辞退される方が多いので」というものだったが、それは合格率ではなく入学率の違いだろう。意味がわからないし、納得できる受験生はどれくらいいるだろう。

 今回、全国的に被害実態が拡大していることが判明した。それでも、被害者の顔は同じだ。女性と20歳以上で受験する男性。同じような顔をした者を揃え、多様性を排除し、内向きの組織を再生産させていく医学界は、いったい何を守ろうとしているのか。人間の健康か、それとも誰も責任を取ろうとしない「僕たちみんな」の組織なのか。

週刊朝日  2018年11月2日号

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北原みのり

北原みのり

北原みのり(きたはら・みのり)/1970年生まれ。女性のためのセクシュアルグッズショップ「ラブピースクラブ」、シスターフッド出版社「アジュマブックス」の代表

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