写真はイメージです (c)朝日新聞社
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高齢者糖尿病の血糖コントロール目標 (週刊朝日2018年11月2日号より)
高齢者糖尿病の血糖コントロール目標 (週刊朝日2018年11月2日号より)

 薬は、「治る(予防する)利点」と「副作用などのリスク」をてんびんにかけて、利点がリスクを上回ったときに飲むもの。薬によって健康寿命を損なうとしたら本末転倒だ。高齢になったら日々飲んでいる薬との付き合い方も変えたほうがいいことがわかってきた。 

【図表で見る】高齢者糖尿病の血糖コントロール目標

 テレビの医療番組などの監修も行う、総合診療医の徳田安春さんは、加齢に伴って見直したほうがいい薬として生活習慣病の薬を挙げる。

「一般的に、高血圧、糖尿病、脂質異常症など生活習慣病の薬は、動脈硬化などによって起こる脳梗塞や心筋梗塞、狭心症などの致死性の病気を予防することが最大の目的。こうした薬の予防効果が現れるのは5年、10年先。平均寿命を前提にすれば、高齢になるほど致死性の病気を予防するという利点は小さくなります」

 徳田さんらが以前、高齢者の入院理由を調べたところ、驚くべきことに5~10%が薬の副作用だった。

「高齢になるほど利点は小さくなり、リスクが大きくなる可能性がある。そのバランスについては個人差もあるので、かかりつけ医と相談することが大切です」

 と徳田さんは言う。

 生活習慣病の薬は、40代、50代からずっと飲んでいる人も多い。“これまで副作用がなかったから大丈夫”と考える人もいるが、「75歳、80歳ぐらいで、一度、減薬を考えたほうがいい」と話すのは、『薬のやめどき』の著者で、長尾クリニック(兵庫県尼崎市)院長の長尾和宏さんだ。

「個人差はありますが、高齢になると腎臓、肝臓の機能が落ちてきて、薬を解毒して排せつする能力『薬物代謝』も衰えてくる。薬の成分がいつまでも体内に残ってしまうので、副作用が強まるのです」

 一方、東京都国立市を中心に高齢者の診療にあたる、新田クリニック院長の新田國夫さんは、「一般的な医師の考えとは違うかもしれませんが、減薬を始めるのは80歳ぐらいだと考えています」という。

「75歳ではひとケタ、75~80歳が14%、80歳になると30%、85歳だと50%の方がフレイルという虚弱な状態に陥ります。3割は大きく、そのころが見直しのタイミングだと考えています」

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