クラフトワークには、いつも、驚かされる。それも、その内容を知るたびに、じわ~っとおもしろさが湧いてくるような驚きなのだ。今回は、それが、3Dだという。
まず、今回の公演内容を確認しよう。
8枚のオリジナル・アルバムを日にち毎、年代順に完全再現するという。前半にアルバムの再現を、そして後半は代表曲をたっぷり演奏するという。加えて、観客には3Dグラスが配布され、ステージ背景に映し出される映像を立体映像で楽しめるというわけだ。
個人的な話で恐縮だが、こういう企画、好きなんです。
まず、わたしの3D体験について。今では、家庭でも楽しむことができるようになったが、ここまでの道のりは、意外と長かったといってよいだろう。生まれて初めてみた立体映画は、73年の『アンディー・ウォーホールのフランケンシュタイン』という別名でも知られる『悪魔のはらわた』。実際には、ウォーホールは、関係してないとのことであるが、内容が、スゴイ!
男と女の人造人間を作って、その二人にたくさん子供を産ませ、その子たちを使って世界征服をしようと計画するのだ。しかし、そのため性欲絶倫の男を捜すのだが、間違えてホモの男の頭を使ってしまう。ま、31年ユニバーサル映画ボリス・カーロフが主演の『フランケンシュタイン』でも、殺人鬼の頭を使ってしまうので、そのパロディーになっているわけだ。見所のひとつが、内蔵がボンボン飛び出してくるのだが、それを3Dで見せてしまおうという企画だ。わたしも、その企画にのって見に行った一人。映画を見終わった出口で、くじ引きがあって、真珠が一粒当たったことを覚えている。真珠は、タダだが、指輪やネックレスに加工するには、有料です、ということだった。加工はせず、しばらく引き出しの中で眠らせていたが、今はもうない。
ついでに、この映画の次に作られた作品が『アンディー・ウォーホールのドラキュラ』というタイトルもある『処女の生血』。この映画、吸血鬼が主役なのだが、その吸血鬼、処女の生き血しか受け付けないという許容範囲の狭い吸血鬼。純潔そうなお嬢様に狙いをつけて、今度こそはと襲うのだが、そのたびに裏切られ、七転八倒するという話。こちらは、3Dではないが、こんな映画、お好きな方は、探してみてください。その次に観た3Dは、東京ディズニーランドで見たマイケル・ジャクソン主演『キャプテンEO』と、これ以上は、脱線しすぎなので、話を元に戻す。
さて、今回、選ばれた8枚のアルバムをあげると、『アウトバーン』『放射能』『ヨーロッパ特急』『人間解体』『コンピューター・ワールド』『テクノ・ポップ』『The Mix』『ツール・ド・フランス』。
日本に先がけて、1月にドイツ・デュッセルドルフのノルトライン・ヴェストファーレン美術館、2月にロンドンのテート・ギャラリーにて行なわれた公演のセット・リストが発表されているが、後半は、代表曲がずらりと並んでいる。この人たちって、こんなにたくさんいい曲作っていたんだな、と感慨深い。
『アウトバーン』が発表されたのが74年。この年に発表されたアルバムといえばポール・マッカートニー『バンド・オンザ・ラン』、エリック・クラプトン『461オーシャン・ブルーバード』、ハービー・ハンコック『ヘッド・ハンターズ』。シンセサイザーを使っているというだけでは、もう話題にならない時代になっていたが、それでも、この『アウトバーン』の音は、新鮮だった。
このヒットをきっかけに、彼らはテクノ・ポップを作り出すまでに発展する。
ここで、日本のテクノの流れを確認しておこう。また、脱線だが。
なぜなら、きゃりーぱみゅぱみゅも、Perfume(パフューム)も、大きくは、ここから流れていると言ってもよいと思うからだ。
日本のテクノの第1次ブームのはじまりといえば、やはり、YMO(イエロー・マジック・オーケストラ)だと思う。いや、世界的にも、彼らの与えた影響は大きい。デビュー・アルバム『イエロー・マジック・オーケストラ』を発表したのが78年。クラフトワークの大ヒット作『人間解体』が発表されたのも78年だ。その後、日本での第2次ブームといえるのが、89年に石野卓球を中心に結成された電気グルーヴ。91年に『FLASH PAPA』で、デビューしている。そして、現在、第3次ブームといってよいと思うのだが、その中心の一人が、中田ヤスタカだ。彼は、作曲をソフトウェア音源だけで作成するという新しいタイプの音楽家だ。Perfumeのほとんどの曲、きゃりーぱみゅぱみゅの全作品を作曲、プロデュースしている。
こんなことを考えながらクラフトワークを聴いてみるというのも興味深いのではないだろうか。
最後に、98年、赤坂BLITZで、クラフトワークを観た時のことを書いておこう。
アンコールで、電卓(のようなもの)片手に日本語バージョン『電卓』を演奏したこと。「ロボット」ではメンバーが出てこず、ステージ上に彼等に似せたロボットだけがいて、音楽に合わせて動いていたことなど、今でも忘れられない。[次回4/24(水)更新予定]
■公演情報は、こちら
http://www.udo.jp/Artists/Kraftwerk/