セミの親子串揚げは780円。フェアの特別メニューだ (撮影/亀井洋志)
セミの親子串揚げは780円。フェアの特別メニューだ (撮影/亀井洋志)
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 ゲテモノ扱いされてきた昆虫食が、じわじわと広がりつつある。国連食糧農業機関(FAO)は人口爆発による食糧危機を救う手立てとして昆虫食を推奨。全国各地で試食イベントが開かれ、レストランのメニューにも登場しているのだ。

 東京・高田馬場にある居酒屋「米とサーカス」は普段、「昆虫6種食べ比べ」「いなごの佃煮」「スズメバチの子甘露煮」の3品を提供。さらに、昆虫食フェア「未来の食卓、昆虫料理」を開催中(9月30日まで)で、期間中は「セミの親子串揚げ」「サソリネギマ」などを加え、計9品を楽しめる。

 鹿や猪などジビエ料理を提供する居酒屋として2011年にオープン。同店を運営する宮下企画(本社・東京都新宿区)の宮下慧さんがこう語る。

「昆虫は、100グラム当たりのタンパク質やミネラル含有量は肉や魚よりも多い。高栄養で環境負荷が少ないので2年前から始めました。ジビエを食べに来られるお客さんは、チャレンジ精神が旺盛なのでしょう。反応は上々でした。いまでは昆虫料理目当てで来るお客さんも増えました」

 記者は「昆虫6種食べ比べ」を注文。コオロギ、ゲンゴロウ、蚕のサナギ、イナゴ、蜂の子、タガメの6種が標本セットのように料理皿に載せられて出てきた。目を引くのは、素揚げされた巨大なコオロギ。タイ産で体長5センチ以上。節のある脚は、サクサクとしており、えびせんのような味だ。

 一方、タガメは殻や羽が硬いため、ハサミで解体。腹部を切り開き、中の白っぽい内臓を箸先で掻き出して食べる。こわごわ口元に運ぶと、不思議なことにフルーティーな香りがする。

「ラ・フランスのようでしょう? オスのフェロモンの香りなんです。メスはおいしくないようですけどね」

 と厨房から店長の石井翔さんが教えてくれた。タイではタレやドレッシングに重宝されるという。

 ゲンゴロウは甲虫らしくやや硬く、噛み続けているうちに口の中に漢方薬のような苦みが広がり、思わず渋い表情になる。苦虫を噛み潰したような顔とは、まさにこのことか。

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