三男一女の4人の子ども全員を東京大学理科III類に合格させた佐藤ママこと佐藤亮子さんは3年前、「受験に恋愛は無駄」発言でネットの炎上を経験した。佐藤さんはその考えに変わりはないとしつつ、「私たち家族はあの経験から大事なことに気づいた」という。佐藤さんの最新刊『佐藤ママの子育てバイブル』(朝日新聞出版)の刊行の際、炎上後を取材した。
炎上のきっかけは2015年8月の公開対談だった。司会者から「受験生の恋愛」について意見を求められ、佐藤さんは「受験に恋愛は無駄です。1日は24時間しかありません。恋愛している場合ではないことを教えましょう」と話した。
佐藤さんは、試験までの時間は限られており、それをどのようにして過ごすかが合否を分ける、女の子とお茶をしている間に参考書を1冊終わらせる方が受験には有利だ、という趣旨で話したつもりだった。
ところが、「恋愛は無駄」という言葉がマスコミで取り上げられ、さらにネットでその言葉が独り歩きして大炎上。佐藤さんは落ち込まなかったものの、「私のような普通のおばちゃんでも炎上するんだ」とびっくりしたという。
一方、心配したのは、子どもたちだった。当時大学生だった3人の息子たちは、東京から奈良の実家まで佐藤さんの様子を見に帰ってきたり、普段はLINEも既読スルーなのにこのときは、わざわざ電話をかけてきたりした。
中でも次男は、フェイスブックで自ら次のようにコメントして、火消しに走った。
「……母の発言は一個人の主婦のものですので、どうか皆さま温かい目で見てやってください。(中略)母は子供が好きでたまらないという人です。つまることころ子ども自慢が行き過ぎてしまったようです……」 当時、この次男のコメントを目にして、冷静になった人も多かったようだ。
「子どもたちや主人が心配してくれたこと、次男が思っていることを文章にしてくれたのはうれしかった」
と佐藤さんは振り返る。
実は、この炎上騒ぎには、後日談がある。佐藤さんの発言をめぐっては、当時、さまざまな専門家が批判的なコメントをしていた。もちろん佐藤さんとは面識のない人たちだった。
炎上騒ぎの一部始終を見ていた子どもたちは「ママはこんなつもりで僕たちを育てたワケではないのに、本人の意見を直接聞かずに非難するのはおかしいのでは」と思ったという。そして、4人の子どもたちはこういったという。
「一生、人を非難することはしないことに決めたよ」 佐藤さんは、今でも「受験期に恋愛は無駄」という考え方は変わっていないという。さらに、炎上騒ぎを通じて、佐藤家は家族の絆を再認識。佐藤さんは「子どもたちが、相手の意見を聞かずに非難したり、背景を吟味せずに安易に批判したりすることの危険性や愚かさを身をもって知ることができたのはよかった」と感じている。
炎上騒ぎの後日談の詳細は『三男一女東大理III合格! 佐藤ママの子育てバイブル 学びの黄金ルール42』(朝日新聞出版)に掲載されている。(本誌・鎌田倫子)
※週刊朝日オンライン限定記事