──選抜大会で敗れた伊野商を破ったチームです。

中村:だから高知商に勝つこと、中山君を打つことが、選手にとっては春の雪辱を果たすことになるという思いだった。そして清原は続く準決勝の甲西(滋賀)戦と決勝で2本塁打ずつを打つんです。

渡辺:一番大事な場面で打つ。本物の証しです。それとPL学園は前後を打つ打者もいいから、うかつに清原君を敬遠できない。桑田君もいいバッティングをしていましたからね。

──横浜とPL学園は強いだけでなく、卒業後も長く活躍する選手が多い。その秘密はなんでしょうか。

渡辺:私は野球をあまり知らないから、その分、真剣に向き合った。そうすると相手も心を開いてくれる。プロに行った教え子が六十数人いますが、技術的に手を加えた記憶はない。いい部分を消したら意味がない。じっと見守る。我慢する。その中で伸び悩むとき、自分が持っている知識を最大限に提供する。それと時代が変わっても、大切なのは本人の意思です。我々指導者にできることは、いかにやる気を起こさせるか。できるようになるまで努力、練習をさせること。そこに付き合うこと。ヒントを与えること。あとは選手の心構えです。

中村:ぼくは監督になったとき、最初に心がけたことは部員全員に練習の機会を与えることです。「お前ら卒業したら、大学や社会人で野球を続けたいんだろ。そしたら、こういうことが大切だよ」と基本的なことばかり教えました。一番大切なのはキャッチボール。それができれば試合に出るチャンスもある。ぼくは30歳まで現役選手でいられたら、野球選手としては成功者だと思うんです。軟式野球も含めてその年齢までプレーできたら素晴らしいじゃないですか。

(司会/朝日新聞編集委員・安藤嘉浩)

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週刊朝日 2018年8月10日号