ふくらはぎの静脈の構造。ふくらはぎの筋肉が収縮すると静脈が圧迫されて血液が心臓のほうへ向かう
ふくらはぎの静脈の構造。ふくらはぎの筋肉が収縮すると静脈が圧迫されて血液が心臓のほうへ向かう
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下肢静脈瘤の危険度チェック。岩井武尚著『下肢静脈瘤・むくみは自分で治せる!』から作成(週刊朝日 2018年8月3日号より)
下肢静脈瘤の危険度チェック。岩井武尚著『下肢静脈瘤・むくみは自分で治せる!』から作成(週刊朝日 2018年8月3日号より)
エコノミークラス症候群とは(厚生労働省の資料から作成/週刊朝日 2018年8月3日号より)
エコノミークラス症候群とは(厚生労働省の資料から作成/週刊朝日 2018年8月3日号より)

 足がつる。むくむ。だるい。それらは、ふくらはぎが弱っているサインかもしれない。「下肢静脈瘤」の症状と重症化する場合についてお伝えする。

【下肢静脈瘤の危険度チェックはこちら】

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 人類は直立二足歩行を体得し、一気に進化した。いまだに四つ足でワンワン、ニャンニャン鳴いている犬とはカラダのつくりが違う。でも、それゆえの“弱点”があった。

 四足歩行の動物は、地面に近い位置に心臓がある。ところが、ヒトは直立するから心臓の位置が高い。足の指先まで送り出した血液を、重力に逆らいながら心臓まで戻さねばならないのだ。

 実はその重要な役割をふくらはぎが担っている。

「ふくらはぎにあるヒラメ筋や腓腹(ひふく)筋などが伸縮し、ポンプのように血液をギュッと上に押し出しています。『第二の心臓』といわれているゆえんです」

 日本静脈学会理事長の岩井武尚(たけひさ)・慶友会つくば血管センター所長はそう話す。

 血液がしっかり循環していると、全身の細胞に栄養や酸素が届く。新陳代謝をよくし、免疫力が高まって脳も活性化する。ふくらはぎの機能が弱まり、血液の循環が悪化すると、そうした利点が損なわれるばかりか、深刻な病気に陥る恐れがある。ひどいときは歩行障害に陥ったり、死に至ったりする症例もあるから油断できない。

 ふくらはぎの代表的な疾患「下肢静脈瘤」は足に瘤(こぶ)ができたり、網目状に青紫色の血管が浮かんだり……。目を覆いたくなるような症例だが、珍しいわけではない。誰もがかかるリスクがある。むくみ、だるさ、足のつり(こむら返り)などを招く一因だ。

 発生頻度の高い大伏在(だいふくざい)静脈瘤。くるぶし→ふくらはぎの内側→太ももの内側→足の付け根を結ぶ静脈の弁が壊れ、うっ血している。

 小伏在静脈瘤。かかと→ふくらはぎの中央→ひざ裏を結ぶ静脈に問題がある。

 下肢静脈瘤が重症化してできた潰瘍(かいよう)ができることも。深刻な痛みを伴う場合もある。

 発症率は加齢とともに高くなる。70歳以上の75%が罹患しているとの報告もある。女性の場合、妊娠経験者の5割が発症するとも言われる。前出の岩井所長によると、両親ともに下肢静脈瘤の場合、90%の確率で子も発症するという。

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