■少し小太りなほうが、長生きする

 前述したとおり、がん患者、とりわけ末期の方の特徴の一つはやせてくるということである。特に消化器系のがんでは、体重が激減してやせるというのが症状のようだ。だが私は、がん患者として幸せなことに、基本的にやせるということを体験していない。抗がん剤治療を始めたときに一時期、体重減少を経験したが、それ以降は一貫して、体重を正常に維持することに成功している。その最大の要因は食事をしっかり取っているからだが、毎日朝夕、体重計に乗って体重測定するのも欠かさずに行い、体調の維持に努めている。
 
 わたしは身長が162センチなので、BMI(体格指数のことで、体重kgを身長mの2乗で割り算)が25程度に収まるように体重は65キロを目安にコントロールしている。やや小太りではあるが、この程度が長生きするとの説もあるようだ。

 がんが明らかになった頃、ある知人から音声付き体重計をいただいた。これは年齢、身長を計器にインプットし乗ると、自動的に音声で体重のほかに、体脂肪、筋肉量、骨密度、基礎代謝量など7項目ほどの測定結果を報じてくれる。最後はそれらの結果を踏まえて、体内年齢にも言及してくれる。

 それによると最近では上昇ぎみだが、がん発覚当初は64歳という診断であった。実年齢より15歳も若いというので、がんと向き合うのに大きな戦力になると自信をもった。ところが2年後の現在、71~73歳にまでに体内年齢が上がってきてしまった。強い抗がん剤を続けて受けた結果、体が弱り体力が落ちてきたということであろう。

◯石弘光(いし・ひろみつ)
1937年東京に生まれ。一橋大学経済学部卒業。同大学院を経てその後、一橋大学及び放送大学の学長を務める。元政府税制会会長。現在、一橋大学名誉教授。専門は財政学、経済学博士。専門書以外として、『癌を追って』(中公新書ラクレ)、『末期がんでも元気に生きる』(ブックマン社)など

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