自宅から高齢者施設に移っても、元気に楽しく過ごすことが多くの人の願い(写真は本文と直接関係ありません) (c)朝日新聞社
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施設入居の際の譲れない条件、チェックリスト20(週刊朝日 2018年7月27日号より)
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定年後の人生が一目でわかる、老後の未来年表(週刊朝日 2018年7月27日号より)
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特別養護老人ホームに入居する理由(週刊朝日 2018年7月27日号より)
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年代別にみた高齢者施設に入る際の心構え(週刊朝日 2018年7月27日号より)
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施設の費用やメリット・デメリット/取材をもとに筆者作成(週刊朝日 2018年7月27日号より)
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 いくつになっても、元気に自立して自宅で暮らしたい。そう思っていても、介護が必要な身になったり、配偶者と死別したり、高齢者ホームへの入居を迫られる時期が来るかもしれない。突然慌てないように、いつごろから、どんな準備をしておくべきか。親子で考えたい。

【施設入居の際の譲れない条件、チェックリスト20はこちら】

 東京都内に住む女性(55)は今年、末期がんの闘病生活を送っていた義母(85)を看取った。余命わずかと悟った義母は、子どもたちを集め、自らの財産の処分方法について話し合う場を設けていた。女性はこう振り返る。

「残される義父(86)のことを最期まで心配していました。銀行預金は1500万円ほどあると伝え、自分の死後は自宅を売って、そのお金で義父を有料老人ホームに入れてほしいと懇願していました」

 しかし、義父はいざ独り身になると、「まだ施設に入りたくない」と頑な姿勢に。義母が倒れて以降、ごはんの炊き方とみそ汁の作り方を覚え、何とか自活できるようになっていた。「俺は誰の世話にもならない」。そう言って、今は自転車で近くのスーパーへ通い、お総菜を買いに行く日々を送る。女性はこう打ち明ける。

「義父は要介護2で、施設に入るのはまだ早いのかもしれません。ただ、独り身のうえ、足が不自由で心配です。義母が考えていた有料老人ホームは高級すぎて、とても入れないこともわかりました。東京都内で探すと、どこも高額な入居一時金が必要。今の貯金では入れそうになく、この先どうすればいいのか……」

 親が80代から90代で、要介護1か2。今は何とかひとりで暮らせているが、いつ寝たきりになるかわからない。施設への入居時期や準備を巡り、女性のような悩みを持つ家庭は多い。親が入居を望んでいれば話はスムーズだが、嫌がる人も多い。

 終のすみかとなる高齢者施設に入る準備を、どう進めたらよいだろうか。様々な施設を16年間で250回も見学した、ファイナンシャルプランナーの畠中雅子さんはこう話す。

「相当な資産を持っている人ならば、特別な事前準備は必要なく、そのときに入りたい施設に入れます。ただ、こうした人は、ほんの一握りです。自分の老後の資金計画を立てて、施設でどんな介護を受けたいのかなど、入居の目的をはっきりさせておかなければ、いざ介護に直面したときに慌ててしまいます」

 早すぎると思うかもしれないが、親の介護と直面する50代ごろから準備すると、安心だという。親を介護しつつ、自らの身に置き換えて老後の暮らし方をイメージする。介護保険の申請方法、ケアプランの立て方や料金体系、どんな種類の施設があるのかなど、親と一緒に知識を得られる。

 最期まで自宅で過ごしたくても、家族らによる介護が難しくなれば、特別養護老人ホーム(特養)など施設への入居を考える必要がある。面倒を見てくれる家族がいないなど、在宅介護が現実的でないケースも多い。施設ならば、認知症への対応や看取りをしてくれる安心感がある。

 介護が必要になった際、多くの人が入居を考えるのは公的施設である特養。民間の老人ホームと比べ、費用を抑えられる。ただ、入居できる人は、原則として要介護3以上に限られる。

 民間の施設は、入居一時金が必要な有料老人ホーム、不要なサービス付き高齢者住宅(サ高住)など様々な種類がある。それぞれの特徴を知っておきたい。

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