この国の司法は、山口氏を不起訴にした。刑事司法で彼が裁かれることはない。杉田氏も「日本の司法が下した判断に疑いを持つことは司法への侮辱」と言っていたが、「司法が不起訴にしたのだから加害男性には触れない」という態度を取るメディア関係者も少なくない。だけれどそもそも、性暴力を裁く司法そのものが、女性の人権とかけ離れた古く硬直した制度と化していることが問題なのだと、BBCの番組は私たちに突きつけた。

 タイトルの「恥」という言葉は、とても強い。だけれど一番の「恥」は、私たちが決してこの「恥」を隠してなどこなかったことだろう。そう、私たちは隠してなど、こなかった。「恥」であるとも認識していなかった。

「恥」を与えられるのは常に女性だ。性暴力を受けた女性、性産業にいる女性、声をあげた女性。女たちに恥を強いる一方、加害者や買春者は性欲に突き動かされる自然現象のように描かれてきた。そのことを恥とも思わずに。

 詩織さんがあげた声に、日本社会は真摯に応答できずにいる。恥ではなく、それはもう既に罪なのだと思う。

週刊朝日  2018年7月20日号

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