性格が優しくて自分の境遇がわかっている竜一はけなげにせっせと幼児の面倒を見始める。そんな竜一が大好きな虎太郎も、保育ルームになじんでいく。竜一のひたむきさにだんだん秀才の女子生徒や子ども好きの男子生徒などが協力していく。

 この作品の魅力は高校生のキャラクターだけでなく、幼児たちが既に個性を発揮し思いがけない言動をするところにある。読者には保育園に孫を送り迎えしている人も多いかと思われるが、保育園で孫がどんな言動をしているか気になるならこのアニメを見ると面白いと思える。もし女性なら「こんなイケメン高校生に孫を任せたい」と思うのではないだろうか。実にハートウォーミングな作品。


 いかがでしたか? アニメを見まくってきた今、感情が揺さぶられるアニメ作品を見ると心と頭と体の健康に間違いなくプラスになる、と確信している。

 日本のアニメの現状について、津堅信之さん(日本大学芸術学部講師/アニメ史)は、こう話す。

「日本のアニメは欧米のそれとは違って手描き感を大切にし、子ども向けではない複雑な物語や心理描写があり、キャラクターの演技では『間』を演出するなど、いかにも日本の伝統に根ざした工夫が多くあります。それはシニアでも楽しめることを意味します」

 そういうベースの上に、時代がシニア向けアニメを求めている、ともいう。

「一昨年公開の『この世界の片隅に』のように多くのシニアに支持された作品も出てきました。あとは、シニアのみなさんの『こんなアニメが見たい!』という要望次第でしょうか。漫画では昔から不倫ものとか社会派ドラマとか、シニア向けのものがあるのに、なぜアニメでは出てこないのだろうと私は思っています」

 紹介した11本をきっかけに、アニメの世界をのぞいてみませんか?(ライター・土肥慎也)

週刊朝日 2018年7月13日号より抜粋

暮らしとモノ班 for promotion
台風シーズン目前、水害・地震など天災に備えよう!仮設・簡易トイレのおすすめ14選