6.「百日紅(さるすべり)~Miss HOKUSAI~」(15年劇場公開 90分)


よくぞアニメにしてくれた! 美しい映像が浮世絵と江戸の街の四季と人々の暮らしを緻密に現出させる

 江戸をテーマにした作品が多い、46歳で他界した杉浦日向子の漫画が原作のアニメ。葛飾北斎と実在した三女でやはり浮世絵師のお栄を中心に物語が展開する。この二人に絡む女好きな居候の善次郎や有名絵師の歌川国直との交流が話を盛り上げる。画面では表題の百日紅がしばしば鮮やかに目を打つ。そして美しい浮世絵だけでなく、異界の感がある江戸の闇にうごめく魑魅魍魎(ちみもうりょう)も描かれる。ストーリーもいいが、とにかくこの作品は絵が美しい。花の吉原や花魁もしばしば描かれるので、その華麗な世界がお好きな方も楽しめる。

 父と娘が描く浮世絵もリアルだし、夜の部屋のあんどんさえも緻密。なにより江戸の四季が現場で見ているように迫ってくる。大川の橋を通る物売りや、行きかう川舟も目の前を通っているような臨場感だ。映画やドラマの時代劇ならなんとか実際の家を使っても正面のカット程度しか撮れないが、この作品は実にリアルに江戸の街並みを奥深く再現している。江戸の夕景もいいし、お栄が盲目の妹を連れて雪の積もった江戸の街を説明しながら歩く日の情景が、心にしみ込んでくるような美しさを見せてくれる。そして父と娘として、師と弟子としての関係が物語に適度な緊張感を加える。優れたストーリー性と美しい情景で楽しめる作品だ。

7.「こちら葛飾区亀有公園前派出所お化け煙突が消えた日」(1998年テレビ放映 約30分)
女先生にさよならするために「お化け煙突」へ向かった勘吉少年の情熱

「週刊少年ジャンプ」に2016年まで実に40年間連載された作品。ファンはもちろんだが、読んだことのある人はたくさんいるはずだ。ギャンブルとお金が大好きでけっこうエッチだがプラモデルやゲームなど遊びは天才的でタフな破天荒警官両津勘吉。ハチャメチャな性格の裏に正義感と優しさを併せ持つのが魅力だ。

 そんな両さんは派出所や商店街の人を巻き込んでいつも大騒ぎを起こす。幼い日から情に厚く抜群の身体能力を持っていたことがわかるのがこの作品だ。小学生の夏の日、担任の先生の代わりに女性の先生が来ることになったが、勘吉は初めて教室に入った先生の顔を見て驚く。偶然だがすでにその先生に会っていて、ひそかにすてきな人だと感じていたのだ。やがて先生と仲良くなった勘吉だが、ついに先生がやめて実家へ帰る日が来る。誤解から先生に不信を感じ見送りをやめようと思った勘吉だが、ギリギリでやっぱり先生を見送るためのアイデアを思いついて、先生の乗った電車から見える煙突を目指す。行け勘吉、全力疾走だ!

 この作品に描かれているのが足立区千住に昭和39(1964)年まであった4本の名物煙突で、見る方向によって1本にも2本、3本にも見えることから「お化け煙突」と呼ばれた。田中絹代が出演した映画「煙突の見える場所」でもまるで出演者のようにしっかり目立っている。

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