■腫瘍が大きくなると視野障害や聴力低下
脳腫瘍の症状は腫瘍のできた場所や大きさによって千差万別ですが、腫瘍がある程度大きくなると頭蓋内圧が高くなり、頭痛や吐き気が起こります。また、腫瘍の周囲の脳機能が圧迫されるため、視野障害や聴力低下、麻痺、けいれん、言語障害などの症状が表れます。
病院では問診やCT、MRI、MRAなどの画像検査で、脳腫瘍と診断します。近年は脳ドックの普及により、自覚症状がなくても、脳腫瘍が発見されるケースが増えてきました。
脳腫瘍と診断されても悪性度が低く、症状がない場合は、定期的な経過観察を続けます。腫瘍が増大したり、症状が表れたりした場合は手術を検討します。
一方、すでに何らかの症状があれば早めに手術を行います。とくに、悪性度が高く進行も速い神経膠腫は、速やかに手術して取り除く必要があります。手術後に放射線治療、化学療法などを行います。
脳腫瘍の治療法はその種類、場所、悪性度などにより異なります。実績のある病院で、十分な経験と技量を持つ医師の治療を受ける必要があります。専門の医師のいる病院では、手術を安全に実施するための手術支援装置も整っていることが多いのです。
■髄膜腫 開頭手術による切除
原発性脳腫瘍の中でもっとも多い髄膜腫は、脳の外側にあるくも膜の細胞からでき、腫瘍が硬膜に癒着して徐々に広がっていきます。頭蓋内のどの部分にもできますが、前頭部や側頭部に多く起こります。頭蓋骨の下半分にあたる頭蓋底にできる場合もあります。
治療は開頭手術による切除です。腫瘍が脳の血管や神経を巻き込んでいたり、脳に癒着していたり、頭蓋底にできていたりすると、手術は難しくなります。合併症を起こさないためにも、経験豊富な専門医による適切な手術が望まれます。
手術を安全に進める支援装置として、MRI画像と連動して術者が手術中に触れている位置がわかる「ニューロナビゲーションシステム」があります。また、手術中に神経機能を傷めていないかを確認する「術中モニタリング」も重要です。電気信号によって運動機能を確認するMEP(運動誘発電位)や感覚機能を確認するSEP(体性感覚誘発電位)といった方法が広く実施されています。
髄膜腫の中には悪性度の高いものもあり、手術後の病理診断によって放射線治療を追加する場合があります。また、悪性度が低くても再発の可能性があるため、手術後も長期間の経過観察が欠かせません。
(文・須藤智香)
※週刊朝日ムック「脳・心臓のいい病院」から抜粋