真瀬:本当ですか? ありがとうございます。
羽田:ドラマの打ち上げなどで野際さんがご挨拶なさるときも、いつもその場にいる人全員のことを考えて話していらしたなあ……。しかも、必ずどこかに笑いの要素があるのよね。
真瀬:面白いこと、人を笑わせることが好きでしたね。
羽田:ドラマの撮影が深夜までかかったとき、着物姿で廊下を滑り始めてね。スピードスケートのまねをして。それで「ああ疲れた」っておっしゃるから、「暴れるからですよ」って(笑)。
真瀬:シリアスな役が続くと「もうコメディーしかやりたくない」って言ってました。
羽田:「人生には試練もある。それを乗り越えるには、ユーモアしかない」って、よく話されていたわ。
真瀬:今回の本を書く途中で煮詰まって、友だちに相談したら「お母さんがどんな人だったか、思いつく単語を挙げてみたら」ってアドバイスされたんです。早速書いてみたら、出てきたのは「三枚目」とか「ふざけんぼ」とか「芸人気質」なんて言葉ばかり。「吉本興業に入ろうかな」なんて話も、10回ぐらい聞いた気がする(笑)。
羽田:あの美貌で面白いことを言われたら、誰もかなわないわよね。ずるいわ! その半面、人見知りなところもあるのよね。
真瀬:母以上の人見知りは、なかなかいないですね。自分からは積極的に話しかけません。大学時代、友だちを家に連れていったときも、母はまったく愛想がなかった。「なんでそんなに不機嫌なの?」って、よく思いました。
羽田:何だか少女みたい。
真瀬:60代のころ、若い俳優さんに食事に誘われ、「2人だと何を話したらいいかわからないから」って、私も連れていかれたことがありました(笑)。相手の方も、さぞ困惑されただろうと思います。
羽田:ベテランの監督さんにうかがったら、野際さんは若いころ、東映撮影所のマドンナだったって。結婚されたときは、みんなでヤケ酒を飲んだって。
真瀬:本人は自分のことを美しいと思っていなかったみたいだし、特にスタイルに関しては、コンプレックスのかたまりでしたよ。