真瀬:特別扱いが嫌いな人でしたよね。
羽田:それでも私から見れば、野際さんはやっぱり特別な魅力を持った方だし、“トップ”が似合う女性。女優以外のどんな仕事をしていても、成功したと思う。例えば、銀行初の女性頭取とか。趣味で描いていらした水彩画もお上手だったし、多才よね。
真瀬:文章を書くのも、うまかったですね。
羽田:あんなすてきな方には、今後もう出会えないんじゃないかな……。お会いするたびに若々しくなるというか、どんどん魅力的になられて、年を重ねるのは怖くないっていうことも、野際さんが教えてくださったことの一つよ。
真瀬:羽田さんとお会いしたときは既に独り身でしたし、自由な生活を楽しんでいましたね。
羽田:以前、仕事のストレスで円形脱毛になったことがあって。メイクさんに指摘されてショックを受けていたら、たまたまそこに野際さんがいらして、「平気平気。私もあるわよ」って。野際さんと“おそろい”だと知って、何だかものすごく安心したのを覚えてる。
真瀬:そうだったんですね。
羽田:「みっちゃんが一生懸命やってる証しよ、お気楽に見えるけど」なんておっしゃって。「がんばってね」「大変ね」でなく、ウィットのきいた言葉で私の気持ちをすくい上げてくれて嬉しかった。そんな野際さんのDNAを樹里ちゃんは受け継いでいるのね。
真瀬:どこをどう引き継いでいるのか、わからないんですけどね。あんなに彫りの深い顔じゃないし。
羽田:ドラマの出演者やスタッフで開いた野際さんのお別れ会で、樹里ちゃんがご挨拶をしたでしょう? あのとき、「野際さんに似てる!」って思ったの。
真瀬:ちょうどドラマで母の役を演じていたので、しゃべり方とかしぐさは似ていたかもしれませんね。
羽田:私が感じた「似ている」という感覚は、そういう見た目の部分ではなく、中からきたものなの。野際さんが確実に樹里ちゃんの中に入った、という感じ。言葉の端々にさりげない気遣いがあって、「これぞまさに野際さんが言ってほしかったことだろう」っていう内容のご挨拶だった。