女優・野際陽子さんが亡くなって1年。年を重ねるほどに魅力が増した秘密とは……。『母、野際陽子』を著した娘の真瀬樹里さんと、母娘と近しかった女優の羽田美智子さんが語り合った。
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羽田:実は私、5、6年前に「野際さんの本を書かせてください」って野際さんご自身にお願いしたことがあるの。野際さんは女性を元気にする言葉をたくさん持っていらっしゃるでしょう? 私たちに話してくださるお話を多くの方に紹介したくて、お聞きしたの。
真瀬:母は何て言ってました?
羽田:「めんどくせぇ」って。
真瀬:ああ、やっぱり(笑)。
羽田:「撮影も取材もみっちゃんがするの? ずっと隣にいるなんて、鬱陶(うっとう)しいじゃないの」って(笑)。
真瀬:母が言いそうなことですね。私も今回の本のお話をいただいたとき、最初はお断りするつもりだったんです。「そんな大げさな人生じゃないんだから、やめてよ」っていう母の声が聞こえるような気がして。
羽田:おっしゃりそう。
真瀬:でもたくさんの方から、「読みたい」「作ってほしい」って言っていただいて、決心しました。ただし、母をオーバーに持ち上げるのは絶対にやめよう、人を笑わせること、楽しいことが好きだったリアルな姿を書こうと。
羽田:野際さんって、ほめられると居心地悪そうだったもんね。
真瀬:そうそう。むしろ、「妊娠5カ月の人くらいおなかが出てるよ」なんてからかうと、喜ぶ(笑)。本では、そういう話も包み隠さず書きました。娘でないと、あそこまで突っ込んで書けなかったと思います。
羽田:私が初めてご一緒させていただいたのは、1999年の「サラリーマン金太郎」(TBS系)だったわ。共演者が初めて顔を合わせる台本の読み合わせって、独特の緊張感があるんだけど、野際さんは品のいいお洋服を着て、楚々としていらっしゃった。大女優なのに「自分は普通の人間だから特別扱いしないで」という雰囲気を出していらして。自然体なのに品格があって、すぐ大好きになっちゃったの。