舘:「定年って生前葬だな」というインパクトのある出だし。壮介が定年を迎え、社員に見送られる、寂しそうなシーンとともに、木魚がポクポクポク……チーンって(笑)。これが鳴ることで、最初はどんな作品なんだろうと思って見ていた方も、あ、笑っていいんだという合図になる。現場の雰囲気って、画面に出ると思うんです。とにかく笑いの絶えない現場で、それが出ていると思いますね。
内館:コメディーだからこそ哀しさが増幅される。その一方で、コメディーだから暗くならないんですよね。
舘:千草(黒木)に「出てって」と言われて、一人でカプセルホテルに泊まることになるシーン。あそこは、原作も脚本も、「棺桶みたい」となっていますが、実際に入ってみたら、思わず言っちゃったんですよ。「けっこう落ち着くな」って。そうしたら、監督がそれを採用してくれて。缶ビールとスポーツ新聞でそれなりに楽しんじゃう。そこに、壮介の持っている明るさ、負けない気持ちがちらついて面白いんですよね。
内館:中田監督が、どんどんコミカルな演出を加えていくんですよね。