

漫画家&TVウォッチャーのカトリーヌあやこ氏が、「おっさんずラブ」(テレビ朝日系 土曜23:15~)をウォッチした。
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おっさんが「好きです!」と叫ぶ絵づらが、こんなにもせつないなんて!? なんせヒロインが吉田鋼太郎。ちょっと噛み砕けない、その事実……とお思いでしょうが、おっさんの表情を見ればもう納得。だって鋼太郎の瞳、キラキラなんだもの。
そんなヒロイン・黒澤(吉田)が恋い焦がれる相手は、会社の部下「はるたん」こと春田(田中圭)。33歳ののほほんとした独身男だ。美しい妻を持ち、出来る上司である黒澤だけど、はるたんの前では「会いたくて会いたくて」震えがちな西野カナ系乙女なのだった。
夜景の綺麗な公園で、黒澤がついに告白するシーン。
「はるたんが好きでええす! ほんとは自分の心の中にしまっておくつもりだった。(略)もう自分に嘘をつくの、やめようと思ってさ」
声でかすぎて、音割れてますから。そして絵づらは、どう見ても蜷川幸雄演出「ヘンリー四世」がなぜかサラリーマンに告ってる図ですから。でかいのは声だけじゃない。春田と同居している後輩・牧(林遣都)も秘めた想いを抱いていた。入浴中の春田にタオルを持って来た牧は、濡れるのもかまわず壁ドンならぬシャワードンキス。
「春田さんが巨乳好きなのは知ってます。でも、巨根じゃダメですか?」
その告白で即座に「うん」て言うヤツいるのかどうか知らんけど、あっちもこっちもでかすぎ祭り。「べっぴんさん」ですかしたドラマーやってた時より、「巨根」て囁いてる方がずっと輝いてるよ、林くん!
そして、迫られるたび「あわわわわ」と、うろたえるばかりのはるたんだ。これが男女の恋物語なら、二人から告られてるのに「あわわわわ」してるだけの優柔不断ヤローめ!となるけれど、このドラマは、「がんばれ」と3人の肩をそっと叩きたくなる不思議。
一時恋愛ドラマのヒロインは、「干物女」系ばかりだった。仕事はキッチリしても家ではダラダラ、恋愛は不器用。一人ビールをプハーッと飲むのが幸せな、心におっさんが住む乙女。
そんなヒロイン像がすっかりマンネリ化した今日この頃、新たに登場したヒロインは、心に乙女が住むおっさんだった。巷のおっさんな乙女たちも、かわいこちゃんヒロインよりよっぽどシンクロしやすいはず。乙女なおっさんの純情に。
※週刊朝日 2018年6月1日号