女優・星由里子さん(c)朝日新聞社
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初期には無症状のことが多い。治療法として手術だけでなく放射線治療と薬物治療を組み合わせることも
初期には無症状のことが多い。治療法として手術だけでなく放射線治療と薬物治療を組み合わせることも
手術適応となるのはIからIIIA期の一部まで。持病があるなどの理由で手術できない場合は放射線治療を検討する
手術適応となるのはIからIIIA期の一部まで。持病があるなどの理由で手術できない場合は放射線治療を検討する

 1960年代、映画「若大将」シリーズで主演の加山雄三さんの恋人を演じ、アイドルとして人気を博した星由里子さん。日本テレビ系「2時のワイドショー」の司会を務め、NHK連続テレビ小説「あぐり」ほか上品な姑役を演じ「あんなお母さんがほしい」と誰もが思った女優が、心房細動と肺がんで死去した(享年74歳)。がん死亡率No.1の肺がんだが、最も安全な手術法があるという。

【肺がんの年間罹患者数やかかりやすい性別、主な症状などのデータはこちら】

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 星さんが発症した肺がんは、がんの中での死亡者数が最も多く「難治がん」とも言われる。初期には無症状のことが多いが、進行すると咳、痰、胸の痛みや息苦しさを感じる。日本において大腸がん、胃がんに次いで罹患者数が多い肺がんだが、早期発見ができれば手術や放射線治療により完治も可能だ。

 肺がんの早期発見には、CT(コンピューター断層撮影)検査が最も有用とされ、CT検査の普及や診断技術の進歩により、早期に肺がんが見つかるケースが増えつつある。一方で、一般的な健康診断にはCT検査が含まれないことも多く、X線検査ではごく早期の小さながんや、臓器や骨の裏側にあるがんは発見できないこともある。

 とくに肺がんは、初期には自覚症状がないことが多く、症状が表れたときには進行していることも多い。「毎年健康診断を受けているから早期発見できるはず」と、過信はできない。

 肺がんの発症には、喫煙(受動喫煙含む)や大気汚染、女性ホルモンなど環境的な要因が関係していることが考えられると国立がん研究センター東病院呼吸器外科の坪井正博医師は話す。

「喫煙者だけでなく、非喫煙者でも家族や職場に喫煙者がいる場合や、身近に肺がんにかかった人が何人もいる場合、咳が長引く場合(2~3週間以上)などは一度CT検査を受け、異常がなければ、その後は数年に一度でいいのでCT検査を受けたほうがいいかもしれません」(坪井医師)

 肺がんは、がん細胞の形や性質によりいくつかのタイプ(組織型)に分けられ、それぞれの組織型やがんができる場所により、がんの性質や進行のスピードが異なる。場所としては、肺の入り口付近にできる「肺門型」と、肺の奥のほうにできる「肺野型」に分けられる。組織型では、「高悪性度神経内分泌がん(小細胞がん、大細胞神経内分泌がん)」と「非小細胞がん(腺がん、扁平上皮がん、大細胞がんなど)」に分類される。

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