1日3時間のリハビリ以外にも、本人の歩行能力の改善に応じて看護師や家族の介助を受け歩行訓練や自主練習を実施。手の麻痺のリハビリもおこない、75日後に退院。退院から1カ月後には復職することができた。また、サックスも演奏できるようになり、現在も仕事を続けている。

 病気やけがによって、からだや心に障害を受けると日常生活や社会生活に制約が生じる。こうした人に対して、からだの機能を回復させ、自立した生活を送ることができるようにするための訓練などの過程がリハビリテーション(リハビリ)だ。

 このうち、回復期リハビリは命の危険を脱した後に集中的にリハビリをおこなう医療。手術などを中心に治療をする急性期病院でおこなわれるリハビリとは区別される。厚生労働省の主導により、2000年から医療保険の対象となった。

 回復期リハビリテーション病棟協会によれば、原因となる病気で最も多いのが脳卒中だ。現状よりも回復が見込める患者が対象で、車椅子が必要なケース、場合によってはベッドでの生活が中心となる患者も受けることができる。

 東京慈恵会医科大学病院リハビリテーション科教授の安保雅博医師は言う。

「リハビリが診療報酬上で評価されなかった時代は山間の病院などがリハビリを担っていました。現在は都市部にも多くの病院ができ、自宅や職場の近くでリハビリができるようになりました」

 回復期リハビリ病棟として認められるにはさまざまな基準がある。医師や看護師の配置のほか、立つ、歩くなどの基本動作の機能回復を担う「理学療法士」、食事や入浴など日常生活動作を担う「作業療法士」、言語障害や嚥下障害、さらには近年、増えている高次脳機能障害を担う「言語聴覚士」などリハビリ専門職の人数、リハビリをおこなう機能訓練室の面積や使用する器具などだ。患者の入院期間も決まっており、脳卒中では最長180日までとなっている。

「リハビリによる機能の回復は発症後約6カ月までは上昇、その後、固定化されるという根拠ある研究データから算出されています。近年は新しい治療によって6カ月を過ぎても回復する可能性が報告されてきていますが、これも基本となる回復期リハビリをやってこそ、得られる効果です」(安保医師)

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