「大切なのは、体を作るタンパク質をいかに効率良く摂取するか。大谷選手の肉体を維持していくには、毎食あたり60グラム以上という、一般の人のおよそ2~3倍量のタンパク質をとる必要があります」
つまり、「高タンパク低脂質」のメニューを効率よく摂取することが大事だ。
「牛肉や豚肉はモモやヒレ、鶏肉はムネやササミなど脂質の少ない部位を300グラム食べれば、60グラムのタンパク質がとれる。足りない分は、プロテインやサプリメントでも調整します」
日本ハム時代は食生活も球団がしっかり管理する寮生活だった。対して米国では、初の一人暮らし。そんな大谷選手への栄養レクチャーを兼ね、大前さんは今年2月、米アリゾナ州での春季キャンプにも帯同。100グラムずつのメニューを100食作り置き、それら三つを合わせれば、毎食必要なタンパク質がとれるよう、キャンプ中の食事をサポートした。
さらに、大谷選手のリクエストに合わせ、滞在先のコンドミニアムで、オムライスやハンバーグなどの調理実習も実施。包丁を片手にタマネギのみじん切りから実践し、チキンライスの上にふわとろ食感の卵がのったオムライス作りを経験した。
ただ、自炊で心配なのがけがだろう。
「大谷選手は手先が器用で、包丁さばきも上手です。しかし、包丁によるけがは、料理中より洗うときが圧倒的に多いので、食洗機を使うように言いました」
シーズン中の現在は、球団から毎食食事が提供されている。朝は卵とソーセージ、主食はパンとライス、そしてフルーツやヨーグルトなどの乳製品、サラダなど。昼と夜は、主食、サラダ、フルーツ、ヨーグルトに加え、牛、豚、鶏肉がシンプルに調理されたものが一般的。日本のように和洋中とバラエティーに富むわけではない。中には、変化のない食事がストレスになる選手もいるが、大谷選手は順応。出されたメニューの中から自分で栄養素を計算し食事しているという。