ドラァグクイーンとしてデビューし、テレビなどで活躍中のミッツ・マングローブさんの本誌連載「アイドルを性(さが)せ」。今回は、「山口達也」を取り上げる。
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私が所属する音楽グループ『星屑スキャット』がファーストアルバムをリリースした日の夕方に飛び込んできた山口達也さんのニュース。まさに新宿二丁目でのライブ開演に向けて支度をしている時のことでした。
以前ここでも『二丁目におけるセックスシンボルの真骨頂』として彼を取り上げ、『45歳(当時)にして現役バリバリの古き良き王道アイドルな顔立ちと、とめどない絶倫性はレジェンド級』と表現しましたが、40代以上の二丁目住民たちにとって、『山口達也』という男は、(タイプか否かは別にしても)特別な存在です。理由のひとつとして挙げられるのが、93年に日本テレビで放映されたドラマ『同窓会』です。その中で山口さんは、二丁目で青春を謳歌するバイセクシャルの高校生を演じ、工事現場の片隅で斉藤由貴さんと野外プレイをしたり、西村和彦さん演じる『カミングアウトできないサラリーマン』と数々の官能的なラブシーンを繰り広げました。当時も今も、ここまで写実的にゲイの世界を扱ったドラマ(しかも水曜22時)はなく、「同窓会の放映が始まると二丁目から人が消える」と言われるほど、一般世間はもちろんのこと、二丁目当事者たちにとっても衝撃的な作品でした。山口さんが演じた『嵐』という名の男子高校生は、とにかく血気盛んで恋にまっしぐら、それでいて男気に溢れるキャラクターで、同じくゲイの友人『潮(うしお)』役の国分太一さんと夜な夜な二丁目のバーで、恋やセックスの悩みを大声で打ち明け合うシーンは、まだ二丁目未経験だった18歳の私に期待と希望を与えてくれたものです。同時に山口さんが発する「俺、好きな人のだったらザーメンだって飲めちゃうんだぜ」とか「若いカラダ味わっといて無料(タダ)ってことはねえだろうよ!」なんて台詞に、えも言われぬドキドキを覚えたことも、今では甘酸っぱい想い出です。この作品を機に『山口達也』は、TOKIOデビュー前にもかかわらず、古式ゆかしい王道ジャニーズ然とした圧倒的な存在感で、二丁目のアイコンとしての地位を築き、今日に至ります。あれから25年。山口達也、よもやの『逆・同窓会』。