カトリーヌあやこ/漫画家&TVウォッチャー。「週刊ザテレビジョン」でイラストコラム「すちゃらかTV!」を連載中。著書にフィギュアスケートルポ漫画「フィギュアおばかさん」(新書館)など
カトリーヌあやこ/漫画家&TVウォッチャー。「週刊ザテレビジョン」でイラストコラム「すちゃらかTV!」を連載中。著書にフィギュアスケートルポ漫画「フィギュアおばかさん」(新書館)など
(c)カトリーヌあやこ
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 漫画家&TVウォッチャーのカトリーヌあやこ氏が、「あなたには帰る家がある」(TBS系 金曜22:00~)をウォッチした。

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 今期のドロドロ枠はこれですよ。結婚13年目の夫婦、佐藤秀明(玉木宏)と真弓(中谷美紀)。結婚記念日4月13日金曜日に、妻は夫の好きなメンチカツを揚げ、その頃夫はホテルの1313号室で、よその奥さんを抱いていた。なんちゅー恐怖の13縛り。

 秀明は住宅販売会社の営業マン。そんな彼の前に二世帯住宅の相談をする夫婦が現れる。茄子田太郎(ユースケ・サンタマリア)と綾子(木村多江)だ。この多江からだだ漏れる色気、登場した瞬間から危険な匂いしかしない。

 とんでもないモラハラ夫の太郎は、何かっつーと妻に「誰のおかげなんだ?」と問いただす。そのたびうつむき加減で「あなたのおかげです」と、ひっそり呟く多江のうなじ。これ見ただけで致命傷。もはや凶器なんである。

 モンスター顧客と化した太郎に呼び出され、酔いつぶされる秀明。気づくと、そこは太郎の家で、なぜかズボンをはいてない。闇の中、「苦しそうだったから……」と囁く多江。普通そういう時はネクタイかベルトを緩めるでしょうがーってところで、ズボンを脱がしにかかる人妻。殺す気か!(男の自制心を)。

 そこはなんとか耐え抜いた秀明だったが、結婚記念日で早めに帰ろうとか、妻と一緒に久々にショッピングなんて矢先に、必ず現れるんだ、多江。しかも雨です。晴れの日よりも、さらに殺傷能力が高い雨に濡れた多江。うるうるした瞳で訴える。「幸せだけど……でも寂しい」と。

 何か常にユラユラとゆらいでるんだよね、多江の顔立ち。右頬のホクロを中心にゆらぎ出す。ろうそくの炎のように。木漏れ日のように。蛍の光のように。人は1/fゆらぎを感知すると、自律神経が整えられ、癒やされるというけど、多江のゆらぎは男の心を果てしなくかき乱す。

 そんなゆらぎ顔で「奥さんなんて呼ばないで! 名前で呼んで……」なんて言われた日にゃあ、ああた。もうこれ、「罠です」ってでっかく書かれた看板が立った落とし穴。でもね、飛び込むでしょ。落とし穴の中は底なし沼。わかっちゃいるのに落ちるんでしょ。

 なんと恐ろしい最終兵器・人妻多江。まんまとはまって、ホテル代をカードで支払っちゃうような脇が甘すぎる夫は、今すぐ妻に証人喚問されるように。

週刊朝日  2018年5月18日号

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カトリーヌあやこ

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カトリーヌあやこ/漫画家&TVウォッチャー。「週刊ザテレビジョン」でイラストコラム「すちゃらかTV!」を連載中。著書にフィギュアスケートルポ漫画「フィギュアおばかさん」(新書館)など。

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