英さんは「在宅医療は、自宅で療養する人の人生を、再出発させる医療」と位置づける。それはどのような医療やケアなのか。在宅医療を選択した人たちを取材した。

 カズノリさん(72)の妻(70)は悪性リンパ腫を患い、現在、車イス生活を送る。10年ほど前から太田さんのいるおやま城北クリニック(栃木県小山市)の在宅医療を受けている。そのきっかけを、カズノリさんはこう話す。

「手術と放射線治療後、杖で歩いていたら骨折してしまったんです。入院することになったのですが、病院からは“夜はお願いします”と言われまして。病院に行って妻をみるくらいなら、連れて帰って自宅で面倒を見てやろう、と」

 入院前から病気によるけいれん発作が表れるようになっていたが、退院直後は、寝たきりで意思の疎通も難しくなっていた。そこで食事をしっかり食べさせ、太田さんらの指示に従って、けいれんを抑える薬の量を減らしたところ、意識がはっきりしてきたという。

 こうしたケアのおかげで、今では車イスをこいで少しの距離を移動し、簡単なコミュニケーションがとれるまでに回復した。

「毎日見ているので、調子がよいかどうかがわかる。今では旅行にも一緒に行っています」(カズノリさん)

(本誌・山内リカ)

週刊朝日  2018年5月4-11日合併号より抜粋

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