ドラァグクイーンとしてデビューし、テレビなどで活躍中のミッツ・マングローブさんの本誌連載「アイドルを性(さが)せ」。今回は、「渡辺直美」を取り上げる。
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引き続き大相撲の女人禁制問題。例えば「女装している私なんぞが土俵に上がったら罰当たりなので遠慮させて頂きます」的な奥ゆかしさもまた、伝統やしきたりに寄り添うひとつのスタンスなのでは……と先週書かせて頂きました。しかし世の中どうにも埒があかないようなので、今週はさらなる提案をさせて頂こうかと。ずばり『大相撲総体重制』です。
元来、お相撲さんに対して抱く『ありがたみ』や『神聖さ』はどこから来るのか。それは、時代に関係なく結い続ける大銀杏のちょんまげ頭。お尻丸出しのほぼ全裸状態を大衆に晒す潔い姿。そして何と言っても、そのふくよかで大きな体ではないでしょうか。かつて日本では、平均より大きな子供を『健康優良児』として称えた時期が数十年にわたってありました。やがて戦後の貧困を脱し栄養事情も良くなって以降、彼らは一転『肥満児』なるレッテルを貼られ、ひいては『成人病』や『メタボ』といった既成概念が幅をきかせるようになり現在に至ります。そもそも体の大きさは遺伝や生まれ持った骨格に因るところも大きく、そこに優劣を付けるのはおかしいのですが、だからこそ『恵まれた体格』というのは、それだけでありがたいわけです。その『ありがたみ』を男女問わずに崇め奉納する場所として相撲の土俵が存在するというのはダメでしょうか?行司や呼び出しさんなどを除いて、土俵に上がることができるのは一律『新弟子検査の基準にある体重67キロ以上の男女(ただし相撲協会に所属する元力士、小学生以下の子供や身障者の付添人などはその限りではない)』。こうすれば「女性だからダメ」なんて理不尽なことも言われずに済みますし、小柄な男性市長さんや大臣さんたちも、うかうかしていると土俵上で挨拶できなくなります。その上、相撲関係者が守りたい『土俵の特別感』みたいなものも保たれる。これぞ21世紀に対応すべくウルトラC級の大相撲改革ではないでしょうか? 「お前男なんだから土俵に上がれよ」といつか無理強いさせられるんじゃないかと身を案じている私も、適度な体重維持さえ怠らなければ心配なさそうです。