もともと水晶体は、リラックスしているときには薄く、ピントは遠くに合っているものです。脳が「近くを見ろ」と指示を送ると、水晶体を支えている「毛様体筋」が緊張して縮み、水晶体がぐっと厚みを増します。近くを見ることのほうが、水晶体にとっては大変です。近くのものから見えにくくなるのはそのためです。
老眼はその後も進行します。水晶体が弾力を完全に失って、厚みが固定されてしまうと、ピントは一点にしか合わなくなります。それが60歳ごろです。
■近視の人は「老眼に気づきにくい」に過ぎない
近視・遠視・乱視にかかわらず、老眼はすべての人に起こります。よく「近視の人は老眼にならない」「眼のいい人は早く老眼になる」などと言われますが、梶田医師は「それは誤解」と言い切ります。
「近視の人はもともと手元にピントが合っているため、老眼になっても比較的手元が見えやすい。そのため気づきにくいだけです」
一方で、「眼がいい」と言われる遠視ぎみの人は、近くを見ることが苦手。さらに加齢で水晶体が硬くなると、より近くが見えにくくなるため、老眼に気づきやすいのです。(文/神素子)
※眼の病気&老眼がまるごとわかる 2018 (週刊朝日ムック)