重厚なサウンドの合間から聞こえるシリアの歌声は夢見る乙女のように甘く、キュート。ティーン・アイドル風で、大瀧の狙いを具現化してみせている。
2曲目の「恋はメレンゲ」も大瀧の作詞、作曲。軽快でリズミカルな演奏はカリプソ的でもあり、“ロンバケ”の気配がのぞきはじめる。シリアは舌ったらずな口ぶりを交えて歌う。
「ドリーミング・デイ」は山下達郎と大貫妙子の共作。シリアの歌は伸びやかではつらつとしている。
「One Fine Day」はシフォンズのカヴァー。ニューオーリンズのR&B的なファンク・テイストによる演奏と、シュビドゥバ・コーラスをバックにしたシリアの歌は、英語曲ということもあって生き生きとしている。本作でのハイライトのひとつだ。
「Walk With Me」はニール・セダカのカヴァー。ソウル・テイストによるロッカ・バラードで、実直な乙女のような歌いぶり。「こんな時」は大瀧のオリジナル曲をカヴァー。豪雨の日にこそ恋人が傍らにいてくれたらと、心もとない思いをかれんに表現。
大瀧とのデュエットも2曲ある。
「The Very Thought Of You」はイギリスのスタンダード曲で、大瀧はリッキー・ネルソンのヴァージョンで知ったという。演奏にはリッキーの「Fool Rush In」を下敷きにラテン・テイストを織り込んだ。大瀧はクルーナー・スタイルの伸びやかな歌いぶり。シリアも実にリラックスしている。イントロやコーダでのコード進行は“ロンバケ”の「カナリア諸島にて」や「Velvet Motel」に登場。ドラムのフィルにも似たものがある。
「Whispering」では、大瀧がファルセットをたっぷり聴かせる。シリアは乙女のような歌いぶりで、甘い声で語りも。
「Oh Why」はフィル・スペクターの曲。サウンドもスペクター・スタイルで、山下達郎編曲のストリングスが見事だ。ガールズ・ポップスの神髄を見せた曲で、「夢で逢えたら」に勝る輝きを放っている。