妻:あれがたぶん、プロポーズだったんだよね。
■「もう役者はやめたら?」実家の干物屋を継いだ夫
妻:結局、私のワンルームマンションで一緒に暮らすことに。
夫:初めは心配したんですよ。セリフ覚えるのにぶつぶつ言ったりするし、彼女は原稿仕事があるし。
妻:私、そういうの全然平気なんですよ。テレビつけっぱなしでも仕事してますしね。むしろ彼のほうが一人になれなくて嫌だったかもしれない。屋上で練習してたでしょ。管理人さんが「彼、大丈夫? 屋上で何かぶつぶつ言ってたけど……」って、心配してたよ。
夫:あはは! そりゃ申し訳なかった。
妻:そのあと、交通事故にもあったよね。
夫:そうそう。酔っぱらって、マンション前の路地でタクシーにひき逃げされたんです。
妻:この人、よく事故にあうんですよ。ちゃんと歩道を歩いてるのに、突っ込まれたり、巻き込まれたり。そのときは私が、たまたま友達と海外旅行で不在で。帰ってきたら部屋に負傷兵が寝てた(笑)。
夫:腕の皮膚がずるむけになって、肋骨(ろっこつ)2本と第3腰椎の横突起を骨折。
妻:入院してなきゃいけない大けがなのに、猫の世話のために無理やり帰ってきてたのよね。
夫:それもあるけど、入院したらお金がかかるじゃない。肋骨も腰椎もギプスできないし、入院しても痛み止めをもらって寝てるだけ。だったら帰りますと。
妻:血まみれのTシャツとタイヤ痕のあるズボンが脱ぎ捨ててあった。彼は自分も酔っていたし記憶も定かじゃないからって、あきらめてる。こっちは怒り心頭ですよ。「行くわよ!」って、警察署へ。
夫:まるでドラマですよ。刑事さんが話を聞いてくれて、すぐに捜査開始。なんと次の日には犯人逮捕!
妻:交番はあてにならないことがよくわかった。被害者を酔っ払い扱いして、まともに取り合ってくれないんだもの。
夫:どうやら通りすがりの方が通報してくださったらしくて。
妻:そう。マンションの防犯カメラに映ってた。お礼が言いたいけど、どこのどなたかわからないんです。