妻:ふたりきりになりたいから、内心イライラしてたわけですよ。みんなさっさと帰ってくれないかなあと。
夫:そうだったんだ。
妻:うちへ来てこの人、私の猫とずーっと遊んでたんです。猫じゃらしでパタパタと。それを見てほれ直して。やっぱりいい人だ!
夫:ところがそこで、先輩がつかみ合いのケンカを始めちゃって。
妻:彼が「まあまあまあ……」って仲裁に入って、みんなで外へ出てっちゃった。
夫:女性の部屋でケンカなんて、迷惑ですからね。
妻:ハラハラしながら様子をうかがってたら、「わーっはっはっ」って笑い声と「じゃ、そういうことで! 一本締めで。よーっ!」なんて聞こえてきた。
夫:みんなで飲みなおそうって、彼女を置いて新宿へ戻ることに。どうにか収めたものの、僕がついてないと、またケンカになりそうだったから。
妻:そのあと、どうしたんだっけ。くぼちんが連絡くれたんだっけ?
夫:そっちからだよ。「あれからどうした?」って。
妻:あははは! ケンカのその後を心配するフリして。なんとかつなぎとめようとしたんだね。
■なんとか逃げたい夫なんとか捕まえたい妻
夫:初デートは、悲惨だったね。俺がずっと、元カノの話しちゃって。
妻:まったくもう。
夫:ひょっとして好かれてるのかな? ぐらいには思ってましたけど、そのときは誰かと付き合おうって気持ちがなかったんです。
妻:聞いてるこっちはどんどんつらくなってきて。
夫:とうとう彼女、突然怒って泣き出してしまった。
妻:もういい! わかった!って、店を飛び出した。
夫:慌てて追いかけたら、最初に会ったときの先輩の店に駆け込んだね。
妻:会員制のバーだったんです。外からピンポン押して、開けてもらうの。
夫:先輩から「お前、今日のところは帰れ」。
妻:それでも何とはなしに、ふたりで飲みに行くようになったよね。
夫:そのころ僕は都内の大手ホテルで配膳係のアルバイトをしてたんですよ。遅くまで仕事はあるし、終わった後も先輩に付き合わされたりして、いつも深夜。そんなとき、いつ電話しても明るく「いいよ、おいでよ」って言ってくれて。