演技派として変幻自在な役を演じる竹中直人さん。大物俳優ながら仕事を選ばないといいます。詳細を作家の林真理子さんが聞きました。
* * *
林:竹中さんはもともと青年座にいらして、舞台の人ですよね。
竹中:自分の中でそういった区分けはないですが。多摩美(多摩美術大学)のグラフィックデザイン科に入学して、映像演出研究会という8ミリ映画をつくるクラブに入ったことで、映画の世界、役者の世界に行ってみたいと思ったんです。青年座を選んだのは、洋モノをやらないから。恥ずかしいじゃないですか、日本人が「オフィーリア」なんて言うの。「おい、山田」って呼んでくれよと思っちゃう(笑)。
林:でもいいお芝居だと、10分もすればその世界に入っていけますよ。
竹中:そうですか。でも自分はやりたくないですね。恥ずかしいです。
林:竹中さんが劇団四季に入ったら、どんな感じなんだろう。
竹中:絶対あり得ないです。1次試験で確実に落ちてますね。
林:ちょっと見てみたい気がする。
竹中:うわっ、恐ろしい。想像できない(笑)。小さいところで静かにやってるのが好きですね。今回はシアタークリエですから、それなりの劇場になっちゃいますが。
林:シアタークリエといったら名門ですよ。竹中さんと私はほぼ同世代ですが、どの世界でも60歳を過ぎると消えていく人ばっかりですが、竹中さんは相変わらずのご活躍で、ほんとにうれしいです。
竹中:そんな! とんでもないです! これからどうなるかわからないし、コワいですよ。
林:私も3年先までは仕事があるけど、4年後はどうかって考えますよ。
竹中:そんなことばっかり考えながら年をとっちゃいましたね。調子がいいときはみんなワッと集まってくれますが、「こんなのは長く続かねえよな」ってずっと感じています。
林:でも、今はもうそんな場所にいないでしょう? 仕事なんていくらでも選べそうですけど。